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華々しい展示はないが、宇宙技術が随所で活躍–「CES 2024」スペーステック探索

2024.02.12 10:00

野々下裕子

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 2024年1月に米ラスベガスで開催された世界最大規模の国際テクノロジー見本市「CES 2024」には、150以上の国や地域から13万5000人以上が会場に訪れた。主催するCTA(全米民生技術協会)が100周年を迎えたこともあり、展示カテゴリの数は50近くまで増え、会場はテーマ「ALL ON」のとおり、“テックなもの”はすべて集められたような状況になっていた。

 では、宇宙にフォーカスした「スペーステック」はどうだったかといえば、残念ながら新カテゴリに加えられた2022年のように華々しい展示はなく、4300以上ある出展社の中に埋もれてしまっていたというのが正直なところだ。しかし、よくよく見ると宇宙技術はロボティクスやAIのようにテクノロジーに必要な要素となっており、あちこちで関連する展示を見つけることができた。

「衛星通信」がスマホや農業機器で活躍

 よく見かけたのがGPSをはじめとするGNSS(Global Navigation Satellite System=全地球航法衛星システム)の活用だ。自動車のナビゲーションでは当然のように使われているが、Apple Watchなどのスマートウォッチにも機能が搭載され、身近なものになっている。

 モバイルメーカーのモトローラは、衛星通信サービスを手がけるBullittと協業し、スマートフォンを衛星に対応させる「motorola defy satellite link」を開発している。スマホとBluetooth接続すると衛星通信が使えるようになるというのもので、イノベーションアワードを受賞している。

 CESでは1990年代にサテライトラジオの企業が出展に力を入れていた時期があり、広大なエリアをカバーする衛星技術の出展は現在まで続いている。

 アンテナ技術を製造開発する「TAOGLAS」は、自動車から建物まで様々な場所で使えるGNSSアンテナ関連機器を展示。窓ガラスとアンテナを一体化させて見えないようにするアンテナも展示されていた。

 自律型のインテリジェントロボットでは、スマート芝刈り機&除雪機を製造する中国のYarboが、衛星とリンクして位置情報を認識してコントロールできる機能を同社製品に搭載している。

 製造現場や農業などで使用する作業車両を自律的に運用できるよう、ネットワーク経由でリモートコントロールしたり、IoTで管理したりする技術は、複数の企業が開発を進めているが、そこには衛星通信も活用されている。CESに出展している大手農業機器ブランドのジョンディアも先日、SpaceXの衛星通信「Starlink」と契約を結んだことを発表した。

 世界中を3メートル四方に区切り、それぞれに3つの単語の組み合わせて割り当てることで正確な位置情報を提供するサービス「what3words」は、人工衛星との通信を通じてアドレスを取得している。45以上の言語に対応し、193カ国で日常的に使われている。ナビ、配車サービス、物流で利用され、宅配のラストワンマイルにかかる時間を42%短縮するという数字も出ている。

 宇宙での使用を銘打った製品として注目を集めていたのが、ポータブル電源やソーラーパネルを開発するJackeryが世界初公開した「Jackery Solar Generator Mars Bot」だ。CESのイノベーションアワードも受賞しているコンセプトマシンは、火星のような厳しい宇宙環境で自律走行しながら、上部に備えたソーラーパネルで効率的に太陽光充電ができるという機能を備えているという。

人気のスマート望遠鏡や宇宙デザイン製品も

 宇宙関連のアイテムで人気があるのがスマート望遠鏡だ。老舗望遠鏡メーカーのセレストロンは、天体観測をAIで支援する新型のインテリジェント望遠鏡「Origin」をリリースした。美しい星を見るだけでなく、撮影も適切にサポートしてくれる。

 フランスのスタートアップであるユニステラも、赤いスマート望遠鏡「ODYSSEY」を新しくリリースした。ニコンとの共同開発で完成したミラー天体望遠鏡は、惑星からはるか彼方の天体までどちらの観測にも使えるという。小型で扱いやすく、スマホアプリでリモート操作が可能だ。

 宇宙をモチーフにした製品もいろいろあり、韓国LGのブースではコミカルな宇宙ステーション型スマートコーヒーポッドを展示。また、デンマークの高級スピーカーメーカーDynaudioの新しいオーディオブランドXEOは、没入型のパーソナルシアター「XEO POD」をリリース。SFっぽいデザインをしたポッドの中は意外にやわらかく、配置された20の高性能スピーカーが臨場感あふれるサウンドを再現する。

 これまで特殊な専門ジャンルと見られていたスペーステックだが、徐々に一般的なビジネスでも応用されるようになってきたことがわかる。これからどのような分野と融合していくのか楽しみだ。

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