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ソニーの衛星に搭載「水エンジン」を作った日本ベンチャーPale Blue、量産化へ東京計器と協業

2023.12.20 11:38

小口貴宏(編集部)

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 Pale Blue(千葉県柏市)は12月20日、小型衛星用推進機(スラスター)の量産試作機の製造組み立てで東京計器(東京都大田区)との協業を開始したと発表した。

 Pale Blueは、「水エンジン」と呼ぶ電気スラスターを開発する東京大学発のスタートアップだ。水エンジンは、液体の水から生じる水蒸気の噴出を推進力とするもので、従来の推進剤であるキセノンやヒドラジンのような危険性がなく、取り扱いが容易で低コストな点が特徴。ソニーの衛星「EYE」に採用されたことでも話題となった。

 このほか、水蒸気をプラズマ化させた際に生じるイオンの噴出で推進するプラズマエンジンも開発している。同エンジンは水蒸気式に比べて推力は弱いものの、燃費が良い。同社は水蒸気式とイオン式を組み合わせたハイブリッド型のエンジンも開発している。

Pale Blueの水エンジン

 Pale Blueは、今後の事業拡大のためには低価格かつ短納期、安定した品質で量産可能な生産能力が必要となることを見据え、協業先を探していた。

 一方の東京計器は長期ビジョン「東京計器ビジョン2030」の成長ドライバーの1つとして宇宙事業を掲げている。また、2023年には那須工場内に衛星機器の組み立てや試験を実施する宇宙棟を新たに竣工し、宇宙事業の拡大を図ってきた。また、東京計器はSynspectiveとも量産体制でパートナーシップを結んでいる

東京計器の宇宙棟(栃木県那須市)

 Pale Blueは2023年9月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の量産化実証の実施先として採択されている。10月にはシリーズB投資ラウンドで第三者割当増資を実施し、直近の銀行借入も含め約10億円の資金を調達した。今回両社は、NEDOの量産化実証の一環として協業する。

 Pale Blueの水エンジンは、ウクライナ紛争に伴う小型衛星向け電気スラスターの需要逼迫などを背景に、海外からの引き合いも強いという。今回の協業や量産試作機の製造組み立てだが、実際に量産を開始する時期のめどや、その際の月産台数の想定などは明かせないとしている。

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