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「衛星データ」を触ってキホンを学ぶ–天地人とUchuBiz主催の入門編ワークショップ参加レポート

2023.12.13 09:00

藤川理絵

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 「衛星データ」と聞いて、何をイメージするだろうか──。「何となく使えそうで、いま流行り。でも詳しいことは分からない」。そんな衛星データに対する解像度を上げるため、『「衛星データ」を触ってキホンを学べる入門編ワークショップ』に参加した。

『「衛星データ」を触ってキホンを学べる入門編ワークショップ』

 同イベントは宇宙ビジネスメディア「UchuBiz」と、JAXAベンチャーである天地人が11月20日に東京・日本橋で共同開催したものだ。宇宙ビッグデータを活用したオンラインGISプラットフォーム「天地人コンパス」を実際に体験するため、持ち物はノートPCが必須だった。

 開始前に「実際に衛星データを活用したビジネスアイディアを、自分で考えて持ち帰る」という具体的なゴールを提示されたことで、前のめりな気持ちで臨むことができた。

宇宙ビジネスや衛星データの「基礎知識」

 前半の約1時間は濃密なインプット編だ。最初に、UchuBiz編集長の藤井涼が登壇して、「宇宙産業について」と題して講演した。

UchuBiz編集長の藤井涼

 イーロン・マスク氏が率いるSpace Exploration Technologies(SpaceX)や、Amazonのジェフ・ベゾス氏が率いるBlue Origin、米航空宇宙局(NASA)のArtemis(アルテミス)計画といった世界のトレンドから、官から民への広がりが加速する日本の旬なトピックスまで、宇宙ビジネスの最新動向を幅広く説明したうえで、新規参入におすすめの「4つの注目領域」についても詳しく解説した。

 また、宇宙イベント「SPACETIDE」や、会員制非営利団体「クロスユー」は、宇宙ビジネスを始める足がかりになるという。

 次に、衛星データ事業を展開するJAXA公認ベンチャー「天地人」で取締役COOを務める百束泰俊氏が登壇。「様々な地球観測衛星による宇宙ビッグデータの可能性」と題して講演した。

天地人で取締役COOを務める百束泰俊氏

 百束氏は、人工衛星や地球観測衛星、グローバルでの技術開発動向などについて、ポイントを抑えて説明したうえで、「衛星データ5つの特徴」を教示した。加えて、地球観測衛星から取得できるデータの種類は、「可視光」などの4つにおおまかに分類できることを解説した。

 たとえば、「可視光」衛星データの「越境性」という特徴に着目すると、アマゾンの熱帯雨林の変化を可視化することができる。このような「衛星データから捉えることのできる変化」を多数例示し、また具体的なビジネス事例も紹介した。

「天地人コンパス」で衛星データ利用体験

 前半の講義で、参加者の衛星データ活用へのモチベーションが十分高まったところで、実践編となる後半に突入だ。天地人の上村遥子氏のレクチャーのもと、実際に衛星データに触れる体験に移った。

天地人の上村遥子氏

 まずは、参加者約30人が5つのテーブルに分かれて、各自のノートパソコンを開き、宇宙ビッグデータを活用したオンラインGISプラットフォーム「天地人コンパス」を体験した。各人には事前に体験版のアカウントが付与されており、当日は使い方説明を聞きながら、自由に触ることができた。

 こちらは、任意の二点間の類似度分析を始めるところだ。

 衛星データからは、地表温度や、降水量、米の生産適地、夏の熱中症リスクなど、多様な土地評価ができる。

 さまざまな切り口のデータを使って、全世界から条件に合う適地を探すことも可能だ。

 たとえば、「別荘を持つならどこがいい?」というテーマのグループディスカッションでは、「こういうところは地価が上がるのでは」など、互いに自由な発想で話し合うことができた。

衛星データ活用は新規ビジネスのチャンス

 最後は、いよいよ「ビジネスアイディア探索」のパートだ。衛星データを活用した新規事業のアイディアについて、まずは各自が考える時間を設け、その後、グループで発表や意見交換を行った。

 後半の2時間は、異業種、異職種が集まるからこその盛り上がりで、あっという間だったが、最後に改めて感じたのは、「衛星データ」という従来にはないビッグデータへの着目そのものが、「固定概念の枠が外れる」きっかけになるということだ。

 普段はドローン業界を追う記者である筆者の場合、ドローンに紐づけて考えると、「宇宙から観測できる気象情報とAIをかけ合わせることで、ドローンや空飛ぶクルマの飛行エリアの気象予測ビジネスをできるかもしれない」など、これまであまり考えたことのなかった発想が自然と生まれて驚いた。

 ビジネスパーソンなら誰もが、普段の業務で対峙しているイシューを持つ。そこに、衛星データ活用というエッセンスを取り入れるだけで、新規ビジネスのアイディアが無限に生まれるはずだ。あるいは、「こんなデータを可視化できるのなら、もしかしたらあの課題も解決できるかもしれない」と、発想の転換が生まれるだろう。

 本イベントは、今後も定期的に開催予定だという。衛星データ活用や新規ビジネスに関心のある方はもちろん、既存ビジネスへの閉塞感を打破したいという方々にも、ぜひ参加をおすすめしたいイベントだ。

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