中性子星で地震を確認、「高速電波バースト」の原因か--東大研究グループ

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中性子星で地震を確認、「高速電波バースト」の原因か–東大研究グループ

2023.10.16 14:00

佐藤信彦

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 東京大学 大学院 理学系研究科の戸谷友則教授らによる研究グループは、中性子星で地球の地震とよく似た現象が起きていることを確認した。このことから「高速電波バースト(Fast Radio Burst:FRB)」と呼ばれる天体現象の発生原因が中性子星表面の地震に関係すると考えられるという。

 FRBとは、突如として強力な電波を数ミリ秒(1000分の1秒)ほどの極めて短い時間だけ放射する現象。この現象を何度も繰り返えす「リピーターFRB」も確認されており、中性子星が放射源と考えられているという。特に、中性子星のうち強力な磁気を帯びた天体である「マグネター」がFRBと深く関連しているとみられるものの、発生メカニズムはほとんど分かっていないという。

中性子星の想像図(出典:ESO/ L. Calçada)
中性子星の想像図(出典:ESO/ L. Calçada)

 マグネターでは、強い磁気エネルギーが内部から徐々に浮上して表面の固体地殻を歪め、その歪みに蓄積されたエネルギーが最終的に地震(星震)で解放される。これがマグネターで発生する爆発現象の原因であり、FRBにつながる、という説が有力視されている。そのため、地球の地震との類似性が議論されてきた。

 研究グループは、活動的な3つのFRB源から検出された7000回近いバーストの発生時刻とエネルギーとの関係を調査。その結果、1つのバーストが発生すると関連した「余震」バーストが起きやすくなっており、余震の頻度が経過時間のべき乗で下がることが分かった。

 この性質は、地球の地震とよく似ている。このことから、FRBが中性子星表面の固体地殻で発生する地震と強く関連すると考えられる。

 研究グループはこの研究成果を、FRB発生メカニズムを解明する大きな手がかりになる、とした。さらに、中性子星の表面地殻や内部物質、原子核物理学などの領域で新たな知見を得る可能性もあるという。

FRB(左)と地震(右)の比較(出典:東京大学)
FRB(左)と地震(右)の比較(出典:東京大学)

 太陽より8倍以上重い恒星は、最期に中心部にある鉄で構成されるコアが重力で潰れ、中性子星かブラックホールになる。この最期に放出される巨大な重力エネルギーの一部が恒星の外層を吹き飛ばして、「超新星爆発」と呼ばれる現象を起こす。

 この超新星爆発のあとで、重力で潰れた元の恒星の中心部にある鉄で構成されるコアが超高密度の天体として残ったのが中性子星。質量は太陽の1~2倍、半径は10kmほど。中性子星の内部密度は原子核の内部密度に匹敵すると考えられている。そうした高密度の場合、電子は陽子と反応して中性子になるという性質があり、陽子がほとんどなく、中性子が主成分であることから中性子星と呼ばれる。

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東京大学プレスリリース

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