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ElevationSpace、ハイブリッドスラスタの長時間燃焼に成功–衛星自ら軌道を離脱

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　東北大学発宇宙ベンチャーであるElevationSpace（仙台市青葉区）は8月25日、固体燃料と気体や液体の酸化剤を活用したハイブリッドのスラスタ（推進機）で軌道離脱に必要となる長時間の燃焼に成功したと発表した。

　ハイブリッドスラスタについて宇宙での実験などの後で地球へ帰還できる無人小型衛星で実用化に必要不可欠な技術と位置付けている。

　ElevationSpaceは、ハイブリッドスラスタへの着火技術に関して、宇宙航空研究開発機構（JAXA）や東北大学 学際科学フロンティア研究所と三者間共同研究を締結。ElevationSpaceが2025年に打ち上げを予定する無人小型衛星で世界に先駆けた実用化を目指している。

　ハイブリッドスラスタは、打ち上げ数が急増する小型衛星市場で高い需要が見込まれており、月以遠への高頻度な宇宙探査実現にも寄与すると考えられることから、研究開発を推進している。

　従来、小型衛星や超小型衛星は「運用期間が短い」「衛星自体の設計寿命が短い」などの理由で、スラスタが搭載されていないことも多く、搭載されていても姿勢制御や軌道の微修正といった低推力のスラスタしか持たないケースが多くあるという。

　小型衛星が大量に打ち上げられるようになった結果、打ち上げ機会の確保やコスト低減のため、主衛星打ち上げロケットの空いているスペースに相乗りする「ピギーバック方式」での打ち上げが増加している。

　ロケットから軌道に投入された後、小型衛星自身が希望する軌道高度へ自力でたどり着く必要があるなど、小型衛星がスラスタを持つ必要性が高まっている。

　運用を終了した衛星などが軌道上に放置されることで宇宙ゴミ（スペースデブリ）になる問題も深刻化しており、米連邦通信委員会（FCC）は、任務終了後に衛星が燃え尽きる軌道へ移るまでの期間を「25年以内」と定めた規則を「5年以内」に変更すると発表。衛星自身が運用終了後に、自ら速やかに軌道を離脱する性能を持つことが求められている。

　従来の小型衛星用スラスタは、数ニュートン級の推力しか持たないものが一般的であり、軌道の移動や離脱に必要となる数百ニュートン級の推力を実現できない。

　高い推力を実現する燃料として用いられることの多いヒドラジンは毒性が強く、管理や取り扱いのコストが高いために、スタートアップ企業が利用するには安全性や経済性から、実用化が難しい状況にあるという。

　そこで、安全性と経済性を維持しながら、高い推力を実現する小型衛星用スラスタの実用化を目指し、ElevationSpaceと東北大学 学際科学フロンティア研究所（齋藤勇士助教）は、ハイブリッドスラスタの研究開発を進めてきている。

　固体燃料と気体や液体の酸化剤を使った同ハイブリッドスラスタは、毒性の強い物質を利用しないため、取り扱いにかかる危険がなく、固体燃料のみのスラスタでは実現できない推力制御が可能という。蒸発する液体水素などと比べて、貯蔵性にも優れ、月以遠の深宇宙探査といった長期ミッションにも利用可能という利点があるとしている。

　これまでの研究開発で、真空環境でのハイブリッドスラスタの試作機への着火に成功。着火特性に対して、再現性があることも確認しているという。

　ElevationSpaceが2025年の打ち上げを目指す200kg級の衛星を地球に帰還させるためには、軌道を離脱する推力を得るために長時間の燃焼が必要だが、今回実施した地上での燃焼試験で目標とする長時間燃焼を達成した。

　一般に短時間の燃焼で高推力を発揮するスラスタとは一線を画した発想の設計原理を実証。小型衛星用スラスタとして経済性と安全性を維持したまま高推力を実現するハイブリッドスラスタの世界初の宇宙実証に向け、大きく前進したことになると説明している。

　今回の試験の結果を受け、真空環境での長時間燃焼試験などを進めていく計画だという。

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ElevationSpaceプレスリリース