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宇宙望遠鏡Euclidが「6億画素カメラ」で撮影–「赤方偏移」とは何か
2023.08.03 11:07
欧州宇宙機関(ESA)は7月31日、試験運用中のEuclidがテスト撮影した画像を初公開した。同探査機が正常に動作していることが示された。
Euclidは、欧州宇宙機関(ESA)とEuclidコンソーシアムによって開発された広角宇宙望遠鏡だ。約6億画素のカメラを搭載し、可視光を記録するとともに、検出された銀河の赤方偏移を決定するための近赤外分光計と光度計を備えている。
同機は2023年7月1日に打ち上げられ、その1カ月後に「ラグランジュ点2」(L2)に到着。そこから約6年間、100億光年先までの銀河を観測する。その目的は、ダークエネルギーとダークマターが宇宙の形成に与えた影響を解明することである。
今回、Euclidが捉えた下記画像の左側は「Visible Instrument」(VIS)装置で撮影された。VISは人間の可視光線の一部となる、550〜900nmの波長を捉えることができる。そして右側の画像は「Near-Infrared Spectrometer and Photometer」(NISP)で撮影したもので、約950〜2020nmの近赤外線で赤方偏移を観測する。
赤方偏移とは
そもそも赤方偏移とは、遠くの天体からの光が、その天体が地球から遠ざかる速度に比例して赤く変化する現象を指す。これは宇宙の膨張によるもので、光の波長が伸びることによって起こる。この赤方偏移の観測は、天体がどれだけ遠くにあるか、すなわち、その光がどれだけの時間をかけて我々に到達したかを知る重要な手段となる。
EuclidのプロジェクトマネージャーであるGiuseppe Racca氏は、「Euclidの設計と開発に11年以上を費やした後、これらの最初の画像を見るのは非常に興奮する。ここで見るのはほんの一部の銀河だけで、最小限のシステムチューニングで生成された。完全にキャリブレートされたEuclidは、最大の3D天空地図を作成するために最終的に何十億もの銀河を観測するであろう」と述べている。
Euclidコンソーシアムを率いる天文学者のYannick Mellier氏は、「Euclidの可視・近赤外線観測装置を使って得られた素晴らしい画像は、観測的宇宙論と統計天文学の新しい時代を開く」とも述べた。
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ESA