BULLとJAXA、電気通す「ひも」で宇宙ゴミを除去する装置--共同で事業化を目指す

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BULLとJAXA、電気通す「ひも」で宇宙ゴミを増やさない装置–共同で事業化目指す

2023.07.13 14:28

佐藤信彦

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 大気圏への再突入技術を生かした宇宙利用サービスの提供を目指すBULL(栃木県宇都宮市)と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙ゴミ(スペースデブリ)拡散防止装置の事業化を目指し、事業共同実証プロジェクト「導電性テザー方式デブリ拡散防止事業」を開始した。

 同プロジェクトで開発するのは、カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)電子源と導電性テザー(Electro Dynamic Tether:EDT)を活用した装置。打ち上げ前の人工衛星などに装置を取り付ける。

 ミッション終了後に装置からテザー(ひも)を宇宙空間に展開し、電流を流すと、電流と地球の磁場による相互作用で力が発生し、大気抵抗や地球の磁場の影響で衛星の軌道は変更する。その結果、衛星は速度が落ちて高度が下がり、最終的に大気圏へ突入して燃え尽きる。

EDTがもたらす力のイメージ(出典:JAXA/ALE)
EDTがもたらす力のイメージ(出典:JAXA/ALE)

 この技術は人工的な流れ星による各種サービスなどの事業化を目指すALE(東京都港区)とJAXAが取り組んでいたものだが、ALEからBULLに事業が譲渡され、BULLとJAXAが事業化を目指すことになった(BULLALE)。

 BULL代表取締役兼最高経営責任者(CEO)の宇藤恭士氏は、ALEに在職していた当時、同事業のマネージャーだった。

(左から)BULL代表取締役兼CEOの宇藤恭士氏、ALE代表取締役兼CEOの岡島礼奈氏(出典:BULL/ALE)
(左から)BULL代表取締役兼CEOの宇藤恭士氏、ALE代表取締役兼CEOの岡島礼奈氏(出典:BULL/ALE)

 BULLが開発を進めるにあたり、対策するデブリの対象を人工衛星からロケットへ拡大する。JAXAとの取り組みで開発する装置をロケットや衛星にあらかじめ搭載しておき、ミッション終了後に宇宙空間で展開し、デブリ化を防ぐ考え。

 BULLとJAXAは、小型ロケット向け装置の開発、実証機フライトモデルの設計などを新事業創出プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(JAXA Space Innovation through PARtnership and Co-creation:J-SPARC)」の枠組みで進める。事業化の推進、顧客開拓、販売準備も行う。

BULLとJAXAの役割(出典:JAXA/BULL)
BULLとJAXAの役割(出典:JAXA/BULL)

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