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Starlink、理論上は光ファイバーより低遅延な場合も–理由は?

2023.06.20 13:52

小口貴宏(編集部)

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 6月14〜16日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された「Interop Tokyo 2023」。同イベントにはKDDIで宇宙事業及び技術戦略の担当部長を務める市村周一氏が登壇し、Starlinkなどの衛星ブロードバンドが、理論上は光ファイバー網よりも低遅延となる場合があると明かした。

KDDIの技術戦略本部で宇宙事業および技術戦略の担当部長を務める市村周一氏

 現行のStarlinkでは、ユーザー側の端末はLEO衛星とつながるものの、その衛星は地上局を介して地上網につながっている。つまり、衛星通信とはいえ地上網に依存したネットワークとなっている。

 一方、一部のStarlink衛星には、地上局を介さずに、衛星同士がレーザー光を用いて直接データをやり取りする「衛星間光リンク」という技術が搭載され始めている。市村氏によると、同技術を用いることで、3000km以上の遠距離間で通信する場合、高度500〜600kmの衛星を経由することを加味しても、理論上は光ファイバー網よりも低遅延で通信できるという。

 この理由には「光の伝送速度」がある。光ファイバーを伝わる光信号は、光速よりもかなり遅いスピードとなる。一方、衛星間光リンクを用いた場合、レーザー光は光速で宇宙空間を伝わる。この差が大陸間などといった遠距離の通信で遅延の短縮に効果をもたらすという。

 市村氏はこのほか、KDDIがStarlinkをau基地局のバックボーン回線として活用し、山間部や離島にauエリアを構築する「Starlink基地局」の取り組みや、KDDIが国内唯一の認定Starlinkインテグレーターとして、Starlinkを活用した法人向けソリューションを販売していることなどを紹介した。

 さらに、航空宇宙開発機構(JAXA)と共同で、月面で地上のようにインターネットを利用可能にするための概念検討も進めているとした。

 

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