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ワコール、重力と足の使い方に着眼したスニーカー開発–宇宙飛行士の声を参考

2023.03.17 15:18

飯塚直

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)新事業促進部は3月16日、2021年12月に立ち上げた「THINK SPACE LIFE アクセラレータプログラム」(TSLアクセラレータプログラム)で募集事業者と選定事業者間で製品やサービスを開発していたもののうち“歩く、をととのえる靴”としてスニーカー「ichi-ho」の販売が開始されたと発表した。

 TSLアクセラレータプログラムは、暮らし・ヘルスケア分野の事業化促進に資する活動として始動した「THINK SPACE LIFEプラットフォーム」(TSLプラットフォーム)の取り組みのひとつ。

 共催する募集事業者6社(ワコール、資生堂、ニトリ、JT、パル、JAMSS)が提示するテーマごとに広く事業提案を募集し、各募集事業者が11社11件を選定していた。

TSLの流れ(出典:JAXA新事業促進部)
TSLの流れ(出典:JAXA新事業促進部)

 今回、TSLアクセラレータプログラムで「非重力負荷環境を見据えたフットケア/ヘルスケアの実現」のテーマでワコールと、靴の専門商社である大裕商事(東京都台東区)が「ichi-ho」を開発、ワコールが展開するブランド「successwalk」の製品として販売を開始した。

 ichi-hoは、2本のバンドが伸縮することで足とからだの左右のブレを軽減し、歩行速度の向上をサポートし、快活感のある明るい印象の歩き方につなげられるというスニーカー。足裏の形状に合わせた3Dインソール「美楽る(ミラクル)パッド」で荷重を分散し、安定した履き心地を追求しているという。

 ichi-hoには、successwalkの技術に重力と足の使い方の着眼点や知見を取り入れられているとしている。

 ワコールによると、TSLプラットフォームと2020年に実施したISS生活用品アイデア募集を促進するためのワークショップで宇宙飛行士が地球に帰還した際に「私たちは地球に帰属している」「地に足がつく」という感覚を改めて認識したという声があったという。

 そこで、微小重力下におけるソリューションとして宇宙靴下「アストロソックス」を開発。宇宙靴下を開発する中で宇宙飛行士の声を直接聞く機会やJAXAを含む宇宙の専門家から宇宙生活についての知見などを獲得することで、宇宙生活の課題、重力と身体の使い方に関する知見やノウハウを深めてきたという。

 微小重力空間での足の使い方に着眼した宇宙靴下の開発と、TSLアクセラレータプログラムへの参画をきっかけに、もう一度地上(1G環境下)での足の在り方、身体の使い方を見返し、ichi-hoを開発したという。

 ichi-hoは3月9日からワコールのウェブストアや全国の百貨店で発売を開始。サイズは22.5~24.5cmと22.5~24.0cm。足囲はE。税込価格は22.5~24.5cmが2万6400円、22.5~24.0cmが2万8600円。カラーはブラック、カーキ、ピンクベージュ、ベージュの4種類。

ichi-hoの製品構成(出典:ワコール)
ichi-hoの製品構成(出典:ワコール)

 TSLアクセラレータプログラムをきっかけに生まれた製品やサービスは、地上での販売や社会実装を経たうえで、将来は宇宙での実装を目指している。JAXA新事業促進部は、TSLアクセラレータプログラム由来の製品やサービスの創出を目指し、メンタリングや実証の場連携などのインキュベーション機能を高め、参加企業の各取り組みを支援していくとしている。

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