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福井県の山際で「Starlink」を長期レビュー–3週間の接続維持率99.9%以上と超優秀だった話
2023.03.28 09:30
最近何かと話題の衛星通信サービス「Starlink」。地球低軌道を利用した衛星インターネット接続はどれくらい実用的なのか、福井県の中山間地域で3カ月間にわたり徹底検証しました。
Starlinkを試すに至った経緯
私が働いているセーフィー株式会社(以下、セーフィー)は、ネットワークカメラの映像をインターネット経由でクラウド上に録画、保存し、いつでもどこでもカメラの映像をスマホアプリやPCのWebブラウザで視聴できるサービス「Safie(セーフィー)」を提供しています。
我々のサービスを利用いただいているお客様は様々な業界に及びますが、時折課題として上がってくるのが「インターネット環境がない」というお声です。
そんなお客様向けに、LTE通信ができるSIMとルーターをセットで提供するということもしておりますが、場合によっては「あまりに僻地でLTEも圏外」ということもあり、遠隔視聴できるカメラはわざわざ訪れにくい僻地でこそ本領を発揮することもあり、なんとかそういったお客様も使えるインターネット接続手段がないかと考えていた矢先に出会ったのが「Starlinkでした。
まずプレテスト、都内で一度繋いでみる
Starlinkの注文後しばらくして、アンテナとルーターが会社に届いたので、まずは近くのレンタルスペースで使える屋上エリアを借りて接続テストをしてみました。
設置自体は非常に簡単で、アンテナをベースと呼ばれる土台に挿して地面に置き、電源をつないだルーターから配線を接続すればそれで完了です。アンテナが自動で動いて衛星の電波を捕らえやすい方向に角度を調整してくれます。
専用アプリで接続状況を確認しながら、ルーターのWi-Fiに弊社のクラウドカメラを接続していきます。
速度計測も専用アプリ内で行うことができ、このときは下り100Mbps以上、上り10Mbps以上の速度を得ることができました。そのため、カメラのクラウド録画も問題なし。同時に9台のカメラ映像をクラウドにアップロードし、リアルタイムで映像を確認することができました。
ちなみに、アンテナは基本的に北に向くようになっているようですが、やはり遮蔽物にはかなり弱く、アンテナを半分ぐらい屋根と壁に被せてみたり、大きな梁が上にあるような場所ではオフラインになってしまいました。一般的なマンションで、ベランダに床置きするなどのケースでは接続が難しいかもしれません。
いよいよ本番、地方の中山間部で長期設置
プレテストで弊社のクラウド録画がちゃんと使えることが確認できたため、いよいよ実利用を想定した本番テストを実施しようということで、弊社の商品在庫を取り扱っている福井県の倉庫にStarlinkとカメラを設置することになりました。
なお、今回接続するカメラは有線LANでの接続が前提となるのですが、Starlinkの現行標準品ルーターは有線でのインターネット接続に対応していないので、イーサネットアダプター(1万400円)を追加購入してテストに臨みます。
今回テストを実施する福井県の倉庫駐車場。雲行きが怪しく…
わざわざ東京から福井までアンテナを運ぶなんて大変だったのでは… と思われるかもしれませんが、アンテナ(+ケーブル&ルーター)は大きめのバックパックにすっぽりと入ってしまうサイズ感。さながら通信兵のごとくフットワーク軽く持ち運びすることが可能です。
ちなみに今回接続するカメラは、防水防塵に対応したカメラ3種類。バレットタイプと180°広角タイプ、そして遠隔で画角が変えられるPTZタイプを接続します。
Starlinkとカメラに配線するために、屋外コンセントから防水ボックスに電源を引き込み、その中に電源タップとStarlinkのルーターとPoEハブを仕込んで、Starlinkのアンテナ用配線とカメラ用のLANケーブルを取り出せば準備完了。
早速設置に取りかかります。アンテナを組み立てるのはもはや手慣れたものでものの数分で準備OK。続いて見通しを良くするために設置場所に選んだ駐車場のコンテナ上部に各種機材を載せていきます。すると、ここで2月の福井県の天候が牙を剥きます。
雪なのか霰なのか雹なのか、冷たくて硬い固形物が空から大量に降り注いできました。寒さで手がかじかむ中、なんとかカメラとアンテナの固定を行ない設置は完了。
設置後しばらくすると天候も回復し、私の心の中を表すかのような青空を拝むことができました。
さて肝心のStarlink経由でのカメラ映像録画はどうなっているかというと… バッチリ録画できていました。
速度も東京都内に勝るとも劣らない数値。なんだったら我が家の自宅のWi-Fiに繋ぐより福井の山奥で衛星に繋いだほうが速いという印象です。
あとは長期間設置して様子を見ていきたいと思います。
ストレステスト経過観察
2月21日のカメラ映像を確認してみると… 恐るべし2月の福井。設置後1週間で東京では考えられない量の雪が降り積もります。
しかし雪が降っていることが分かるということはカメラがちゃんと繋がっているということ、Starlinkは雪が降ろうが積もろうがしっかり衛星と通信できているということです。
今回検証したい項目として降雪時の通信レベルを考えていたのですが、この程度の雪であれば問題なく通信ができていることが確認できました。
実はStarlink自体に降雪対策の機能が実装されていて、アプリ内の設定画面で「融雪」という機能をオンにすると消費電力が増える代わりに本体を加熱・保温して雪を溶かせるようになっています。
今回はこの「融雪」の設定を「自動的に雪を検出し、必要に応じて加熱します」に設定しているので、その効果によって通信を担保しているのかもしれません。
ちなみに設置後東京に帰ってもStarlinkの接続状況はアプリから確認できるようになっています。TOP画面での「オンライン表示」だけではなく、「統計」画面でアップタイム、遅延時間、スループットのログが見れたり、「ネットワーク」画面では接続中デバイスの情報まで遠隔で把握できます。
カメラ切断ログを見てみる
セーフィーのクラウド録画サービスは24時間常にカメラ映像をクラウドにアップロードし続けており、いつでもどこでもリアルタイム映像や過去の映像を確認することができます。
これはトータルの通信量で考えると、状況によりますが1台あたり1カ月で約250GBの上り通信を行うことを意味しています。その接続手段であるStarlinkにもほとんど途切れることなく高速な通信を可能にすることが期待されます。
ということで、実際にカメラの録画切断の履歴を約3週間に渡って監視し、まとめてみました。
■切断発生回数
バレットカメラ | 17回 |
180°広角カメラ | 18回 |
PTZカメラ | 19回 |
■平均切断時間
バレットカメラ | 1分00秒/回 |
180°広角カメラ | 1分18秒/回 |
PTZカメラ | 43秒/回 |
■録画成功率
バレットカメラ | 99.95% |
180°広角カメラ | 99.93% |
PTZカメラ | 99.96% |
平均すると1日あたりの切断回数は1回未満でその時間も1分程度と、3週間という限られた期間ではありますが、想定以上に優秀な結果が得られたのではないでしょうか。
単純計算すると合計500GB相当の映像をクラウドに上げ続けたことになるのですが、99.9%以上の接続率でカメラの映像を録画することに成功しました。
ちなみに、弊社でサービス提供しているLTEを利用したクラウド録画カメラは1度も切断しなかったので、LTEと比較すると安定性は劣るという結果になりました。が、速度や通信可能なエリアの広さという点を加味するともはやLTEに完全に取って代わるほどの通信品質を提供できるといっても過言ではないかもしれません。
今後のStarlinkの活用
冒頭述べた通り、Safieをお使いのお客様の中には山奥などの僻地や離島、場合によっては海上など様々な厳しい環境でクラウド録画をされたいというニーズがあります。
このStarlinkを活用することで、遠隔業務がより強く求められる現場のDXに映像の力を活用して貢献することができるよう、引き続き取り組んでいきたいと思います。
ご興味ある方は是非アンテナを背負って日本全国飛び回ってみてください!
(ちなみに、Starlinkでは公式のトラベルケースが販売されています)