ニュース

AI insideと東北大学、AIを共同開発–月や惑星探査でも信頼性高いAIが必要

2023.03.02 12:49

飯塚直

facebook X(旧Twitter) line

 AI inside(東京都渋谷区)と東北大学 大学院 工学研究科 教授 吉田和哉研究室は「極限環境に求められる高耐久・高性能・省エネルギーな次世代型AI」の共同開発とその社会実装に関する取り組みを開始した。3月2日に発表した。

 お互いの知見や技術を持ち寄り、シナジーを発揮することで、まずは月や惑星探査、災害現場といった未知で混沌とした大きな状況変化が伴う環境でも、信頼性が高く効率的に知能的な活動を進めることができるAIを開発する。気候変動や人口爆発、食糧危機といった世界規模の社会課題の解決を目指すという。

 AI insideによると、宇宙開発プロジェクトの多くは国家機関の主導により進められてきたが、昨今では民間企業が独自の知見や技術力を生かして市場へと参入していると説明。特に米国では、ベンチャー/スタートアップ企業が技術力や発想力、機動力などを生かして宇宙産業の成長を牽引。日本でも、ここ数年でベンチャー/スタートアップ企業が急増し、宇宙開発の取り組みが加速傾向にある。

 日本の宇宙産業の成長のためには、産官学が連携して技術力や機動力、資金力を集約したエコシステムを形成し、宇宙産業基盤を強化していく必要があると考えたことから、同社と吉田研究室は共同研究契約を締結した。

 機械学習を応用したAIの光学文字認識(OCR)をクラウドベースで利用できるAI OCR「DX Suite」などを提供するAI insideは、AIが自律的に学習し新しいAIモデルを自動的に生み出す「Autonomous Learning(オートノマス ラーニング)」や仮想分散型のAIネットワーク構築技術など、研究段階を含む最先端AI要素技術もあるという。

 吉田研究室は、これまでに軌道上ロボットの研究や宇宙実証、小惑星探査機「はやぶさ」の開発、月惑星探査ロボットの研究開発、大学発超小型人工衛星の研究開発などで実績があるという。2022年には内閣府の「ムーンショット型研究開発プログラム」に採択され、2050年代の月面開発を担うAIロボットシステムの開発にも取り組んでいる。

 地上とは異なる宇宙環境でロボットシステムを機能させるためにはさまざまな技術的挑戦が必要だが、人の到達が困難な極限環境で、ロボットが人に代わって知能的に活動するためにはAI技術が不可欠と説明。先端的なAI技術の社会実装を強力に推進しているAI insideとの共同研究で宇宙ロボットシステムがより実用的なものとなり、今後の宇宙活動の可能性を大きく拡げる成果が生まれることを確信していると述べている。

Related Articles