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ispaceの月面探査「HAKUTO-R」、2022年末に打ち上げ–民間企業として初
2022.02.07 08:00
MCSSはカナダの企業。ミッションオペレーションや機上自律システム、人工知能に特化した宇宙探査とロボティクスを手がけている。カナダ政府の宇宙機関であるカナダ宇宙庁(Canadian Space Agency:CSA)が進める月探査促進プログラム(Lunar Exploration Accelerator Program:LEAP)に採択されている。
人工知能(AI)技術を応用したフライトコンピューターは、ドバイのRashidと共同で実証実験を行う。フライトコンピューターには、深層学習(ディープラーニング)のアルゴリズムが活用されており、ランダーから展開されたRashidは、月面走行時に取得した画像から地形の特徴を認識できるという。
カナダのCanadensys AerospaceもLEAPに採択された企業。Canadensys Aerospaceのカメラは、ミッション中の重要な事柄を撮影する予定。
「お客さんの荷物を預かる」
1月25日に開かれた報告会でispace 代表取締役 袴田武史氏は、ランダーに搭載されるペイロードについて「ispaceがミッションコントロールセンターで運用する」が、ペイロードのユーザー企業が「ミッションコントロールセンターをリモートで運用する」場合もあると説明する。
ミッションコントロールセンターはNASAやESA、CSA、JAXAなどで宇宙開発に携わった人間が担っているが、そのため「日本人はマイナー」(袴田氏)という。
袴田氏は、HAKUTO-Rについて「速いスピードで商業化したい」という思いから「民間ならではの設計。今ある部品で組み立てている」ことを明らかにしている。
2024年を予定しているミッション2には、ペイロードとして小型月面探査車(マイクロローバー)の搭載が予定されている。ispaceは、ローバーの小型化、軽量化の開発を続けており、将来的には複数のマイクロローバーを月面に輸送して探査、データを収集することを想定している。
マイクロローバーはルクセンブルクにある欧州法人ispace Europeが設計している。ispace Europeは、ルクセンブルク宇宙局(Luxembourg Space Agency:LSA)が管理し、欧州宇宙機関(ESA)が実施する、宇宙資源の探査と活用を目指す宇宙プログラム「LuxIMPULSE」の一環として、LSAとの共同資金で開発している。
ミッション1とミッション2は、月への輸送がメインだ。「お客さんの荷物を預かる」(袴田氏)ispaceの輸送料金について、袴田氏は以下のように説明する。
「これまでの政府機関だと1kgあたり数億円かかるが、ispaceではその数分の一になる」
2025年以降に月面探査を含めた「アルテミス計画」が予定されている。アルテミス計画ではさまざまな物資が必要になり、月への輸送手段も当然必要になる。HAKUTO-Rは、そうした将来への実証実験とも位置付けることも可能だ。
HAKUTO-Rにはコーポレートパートナーとサポーティングカンパニーの2種類で外部からの支援を得ている。コーポレートパートナーには、日本航空(JAL)や三井住友海上火災、日本特殊陶業、シチズン時計、スズキ、住友商事、高砂熱学工業、三井住友フィナンシャルグループといったさまざまな業界から参加している。