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宇宙でのオープンイノベーション–宇宙と地上の生活向上目指す「TSL」の勘所

2022.02.03 07:30

田中好伸(編集部)

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  • 資生堂=生活リズム/体内リズムの見える化と適正化による美の実現
  • ニトリ=宇宙と地上の双方で活用できる、睡眠の質を向上する循環型機能性商品の開発
  • JT=宇宙と地球におけるストレス状態を緩和する“チルアウト”の実現
  • 3COINS=地上でも宇宙でも「ちょっと幸せな日常」を提供する商品開発
  • 有人宇宙システム(JAMSS)=持続可能な自己管理行動を支える遠隔・健康管理支援サービスの開発
  • ワコール=非重力負荷環境を見据えたフットケアやヘルスケアの実現

資生堂やニトリ、JT、3COINS、JAMSS、ワコールが解説

 1月に開かれたワークショップに登壇した資生堂の担当者は、宇宙空間での概日リズムの調整の難しさ、それに伴う睡眠への影響を示しながら、同社が募集するテーマ「生活リズム/体内リズムの見える化と適正化」の重要性を説明した。同社は、「生活リズムや体内リズムの乱れによる不調の可視化/センシングを実現する技術やアイデア」「生活リズムや体内リズムを整えるためのソリューションや行動変容を促すアイデア」を募集している。

 資生堂の担当者は「これまでの研究ノウハウやデータ、機器」などのリソースを活用できることを強調。また、みなとみらいにある同社研究所の低層階にある「S/PARK」の一部を共創スペースとしても利用できるという。

 ニトリの担当者はISSに滞在した前澤友作氏の「寝袋が熱い」という発言を取り上げて、同社のテーマである「睡眠の質」に注目していることを説明した。同社の「Nウォーム」「Nクール」という寝具製品が注目されているが、睡眠には「空間の室温や寝具選び」が大きく関係しているという。

 ニトリの担当者は同社の活用できるリソースとして国内外全693店舗の販売チャネルや顧客接点、アプリから蓄積される顧客データやマーケティングのノウハウ、製品の企画から製造、物流などにいたる自社ネットワークを挙げている。

 JTでは、宇宙でも“チルアウト”(心が落ち着く)状態を作り出すことを目的に、心身の状態を計測するための製品やサービスのアイデアを募集する。宇宙という極限環境でも心身をリラックス、リフレッシュさせられる製品やサービスのアイデアも募集する。

 JTの担当者によると、「製品やサービスのアイデアを磨き込むためのメンタリング、製品を開発するためのアドバイスを提供」できることが強みと説明。同時に製品やサービスを開発するための「ネットワークも提供」できるという。

 全国230店舗の雑貨店「3COINS」を運営するパルが募集するのは、「嫌な臭いを解決できる、ごみ箱や洗濯など匂いを改善すること環境を良くする」。「限られたスペースや制約のある空間を有効に解決できる」「閉鎖空間でも快適に過ごしたい、気持ちが明るくなるような」製品やアイデアだ。

 パルでは、230店舗でのテストマーケティングや原宿にある旗艦店とプロモーションといったリソースを活用できる。さまざまな分野の生活用品の企画や製造などのネットワークも利用できる。

 JAXAに所属する宇宙飛行士の健康管理業務を受託しているJAMSSの担当者は、ISSの今後を見据えて「健康管理のコストを下げることが重要」と説明。そのためには(飛行士自らが)「持続的に自己管理できる」ように「遠隔で健康管理を支援できる」製品やサービスが必要とされていることを明かした。

 具体的には「生活習慣に起因する突然死リスク(循環器系疾患リスク)」などの計測技術、「対面的介入なしに適切なフィードバックと行動変容への支援が可能な健康管理アプリケーション」、「ユーザーの自己肯定感や自己効力感を支える」技術やアイデアを募集している。

 JAMSSの担当者は、これまでの健康管理業務でのノウハウとともに「有人ミッションの安全性に関連する知見」「海外の宇宙関連企業のネットワーク」といったリソースを活用できることを強調した。

 女性用下着で有名なワコールは具体的に「衣類に活用可能な、人体の重力負荷を軽減する素材や技術」「重力状態の可視化、ヘルスケアにつながる評価システムや行動変容の技術やアイデア」「重力ケアの観点から顧客に提供できるサービスの開発やアイデア」を求めている。

 同社は、すでに宇宙飛行士の作業効率を目的にした宇宙靴下「アストロソックス」を開発、2021年10月にJAXAからISSへの搭載可の判断を得ている。ワコールの担当者は微小重力環境では「歩行に課題がある」として、「フットアイテム選びがヘルスケアにつながる」と注目点を解説した。

 ワコールの場合、女性限定だが、「研究被験者と計測データの共有」、同社の「人間科学研究所が保有する研究結果やデータ」も活用できるリソースであると解説。「国内のさまざまな販路や多くの顧客接点の場」も活用できるとした。

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