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「HAKUTO-R」ミッション1打ち上げ成功、民間企業による世界初の月面着陸へ

2022.12.12 07:30

田中好伸(編集部)

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  1. 初回軌道制御マヌーバの完了
    • 初回の軌道制御マヌーバを実行、ランダーを予定軌道に投入するとともに、主推進系と誘導制御系の動作を確認
  2. 深宇宙航行の安定性を1カ月完了
    • 1カ月間ノミナルクルーズと軌道制御マヌーバを実行し、ランダーが安定して深宇宙航行が可能であることを実証
  3. 月周回軌道投入(Lunar Orbit Insertion:LOI)前の深宇宙軌道制御マヌーバの完了
    • 太陽の重力を利用したすべての深宇宙軌道制御マヌーバを完了し、月周回軌道投入マヌーバを完了。ランダーの運用能力と航行軌道計画を実証
  4. 月重力圏への到達/月周回軌道への到達
    • 最初の月周回軌道投入マヌーバによるランダーの月周回軌道投入の完了。ランダーと貨物(ペイロード)を月周回軌道に投入する能力を実証
  5. 月周回軌道上ですべての軌道制御マヌーバの完了
    • 着陸シーケンスの前に計画されているすべての月軌道制御マヌーバを完了
    • ランダーが着陸シーケンスを開始する準備ができていることを実証
  6. 月面着陸の完了
    • 月着陸を完了させ、今後のミッションに向けた着陸能力を実証
  7. 月面着陸後の安定状態の確立
    • 着陸後の月面での安定した通信と電力供給を確立し、ペイロード運用能力を実証

 Falcon 9に搭載されたことでマイルストーン1は成功したことになる。

 12月11日午後4時38分、ランダーを搭載したFalcon 9は予定通りに打ち上げられた。打ち上げ発表会にはispace従業員やペイロード関係者、HAKUTO-Rにコーポレートパートナーとして協力している企業の関係者が参加。打ち上げ発表会会場とは別に、近くのビルにライブビューイング会場を設置、福岡市科学館でもパブリックビューイングが開催された。

 発表会会場ではSpaceXが配信する生中継動画が映し出されていた。画面に映し出されるカウントダウンが30秒前になったとき、Falcon 9の管制官から「All systems go」が聞こえて、会場からは大きな歓声が沸き上がった。

 そして、午後4時38分にFalcon 9が夜空を駆け上がっていくと再び大きな歓声とともに大きな拍手が会場内に響き渡った。ロケット第1段が切り離され、第2段の噴射が始まるたびに歓声と拍手が起こり、ランダーがロケットから分離されるとまた歓声と拍手が沸き起こった。

ランダーが分離。とりわけ大きな歓声が上がった(出典:ispace/YouTube)
ランダーが分離。とりわけ大きな歓声が上がった(出典:ispace/YouTube)

 この時点で、ミッション1の2つめのマイルストーンである「サクセス2」が完了。ispaceの開発するランダーの構造が打ち上げ時の過酷な条件に耐えられることを証明し、設計の妥当性を確認できたことになる。

 ロケットからランダーが分離したのちに、東京の管制室(ミッションコントロールセンター)との通信が確立したことも発表された。ランダーとの通信を確立できるかどうかは重要なポイントになる。

 「ランダーがどこにいるのか、どんな姿勢にあるのか、コマンドを送れるかどうか」(日達氏)、今後の航行すべてに関わってくるために、通信確立は重要になってくる。

 発表会が終了後、午後9時15分からオンラインで記者会見が開催。記者会見の中でispace 最高技術責任者(CTO)である氏家亮氏から、通信が確立するとともに、電力と姿勢も安定していることが発表された。

 3つめのマイルストーンである「サクセス3」に近づいたが、搭載されたペイロードに不具合がないかどうかの確認が終わっていない。ただ、「サクセス3が完了したかどうかは今週中にも言えるだろう」(氏家氏)という状況にある。

 2016年から構想し、2017年から開発を始めたランダーが宇宙に飛び立ち、月に向かい始めている。ispace創業者で代表取締役、最高経営責任者(CEO)である袴田武史氏は、記者会見の中で「これまでの努力が報われてきている」と従業員の労をねぎらった。

ispace 代表取締役 CEO 袴田武史氏。発表会にはフロリダからオンラインで参加(出典:ispace/YouTube)
ispace 代表取締役 CEO 袴田武史氏。発表会にはフロリダからオンラインで参加(出典:ispace/YouTube)

 ミッション1のランダーが今後月に着陸すれば、民間企業で初めて、という偉業になると見られている。しかし、2023年1月には海外企業が月を目指して打ち上げ、ispaceと同じ時期に月に着陸するとされている。

 ispaceが民間企業として初の月着陸に成功する可能性が高いが、袴田氏は必ずしも「1位になることは目指していない。月に着陸する初めてのグループになるだろう。むしろ産業として次につなげることを目指している」と意見を述べた。

 民間企業が宇宙に進出することについて、袴田氏は「(ランダーの設計や開発では)200億円以上を調達してきたが、資金調達が大きな課題。開発のスピードを上げることを意識してきた。つまり、マーケットインのスピードを上げる努力をしてきた。ispaceの場合、世界中のコンポーネントを集めてきた。これは民間企業ならではの強みと言える」と解説した。

 袴田氏や氏家氏をはじめとするispaceの従業員やパートナー企業などがさまざまな形で開発、製造してきたランダーは無事に打ち上げられ、ロケットから分離し、管制室との通信が確立、姿勢と電力は安定した状態にある。2023年4月末予定の月着陸を目指して、ランダーは宇宙を航行し続ける。

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