インタビュー

宇宙ホテルに夢をはせ、ISS退役後を見据えるElevationSpaceの潜在能力

2022.05.25 08:00

田中好伸(編集部)阿久津良和

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「ポストISS」の2030年を見据える

――「ポストISS」という2030年以後を見据えると、アルテミス計画(月面有人探査と将来の火星探査を目指す米国提唱の国際宇宙探査計画)にもElevationSpaceは関わってくると想像できます。2030年以降の宇宙利用はどのような姿になるのでしょうか。

 アルテミス計画や商業宇宙ステーションが実用化するのは2030年頃ですよね。ただ、国の取り組みと民間の取り組みは別です。国は民間が進出できない、ビジネスとして成立するか分からない領域を切り開くのが役割です。一方で地球低軌道は商圏になり得る場なので、民間はリスクをとって取り組むべきと考えています。つまり役割分担が重要になると思っています。

 さらに現在は月面が注目されているものの、地球の低軌道の利用、さらには宇宙旅行といった市場は今後大きく成長するでしょう。われわれとしても宇宙建築の一貫として月面活動にも参加しますが、2030年代には日本初の宇宙ホテルの建築を目標としています。

 (ISSと同じ)高度400kmで稼動するタイプもあれば、より高い場所で地球を見渡せるのも面白いのではないでしょうか。旅行に出掛けたら「ご当地料理」を食べるように、宇宙で生産した食料を提供する必要もあるので、前述した研究開発が欠かせないはずです。

 ただ、宇宙ステーションには人やモノを運ぶ輸送船が必要です。ELS-R1000は宇宙環境の利用を目的としています、大型化やドッキング機構を用意すれば輸送船として利用できるはずです。あとは宇宙建築の技術で「宇宙ステーション+輸送サービス」を提供するのが、われわれが目指している姿です。

 現在ElevationSpaceでは、小型宇宙利用・回収プラットフォーム事業で培った技術をもとに宇宙輸送事業「ELS-T」、宇宙建築事業「ELS-A」への展開を目指しています。当然ながら有人宇宙船の開発は技術的ハードルが高く、段階的に活動を続けなければいけません。われわれは活動の中で技術研究や検証も並行できるように開発していきます。

――2030年以降の宇宙利用は地球が中心になるのではなく、宇宙も拠点の一つになることが予想されます

 はい。われわれが取り組む(地球)再突入技術や輸送技術は、これから誕生する市場で重要になります。単に「宇宙へ行く」のではなく「宇宙で何をするのか」が肝心だと考えています。

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