インタビュー

衛星開発に強いNECが「データビジネス」に注力する理由–SARを生かして空き地検知や地震の被害把握

2023.08.14 11:00

藤井 涼(編集部)日沼諭史

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衛星データ利用のためのプラットフォーム構築を目指す

――今後、SARをはじめとする衛星データの活用はどう広がっていくと考えていますか。

 宇宙データはおそらく今後、どんどん使われるようになっていきます。多くの自治体とお付き合いしていて最近肌で感じるのが、衛星データを活用したいという自治体さんが格段に増えていること。さまざまな衛星データが利用できるようになり、多くの人が活用するようになってきたとき、データをすぐに引き出したり、閲覧したり、提供したりできる仕組みが必要になってくると考えられます。

 そこで必要なのがプラットフォームです。すでにいくつかの民間企業がプラットフォーム的な仕組みを作ろうとしていますし、NECももちろんプラットフォーム構築に着手していますが、いろいろなプラットフォームがしっかり連携して、誰もが衛星データを気軽に扱える、というような状況があと数年で実現すると思っています。

 衛星データの市場は、10年後、国内だけ見ても100億円規模には達すると思っていますが、今のところ事業規模としてはまだ小さく、まさにこれからという段階です。自治体が衛星データを使いたいと言い出し始めたのも、本当にここ1〜2年のことですし、情報提供サービスということで件数も多くはありませんので。

 一方で課題もあります。SARによって建物の変位もはっきり見えてしまいますので、個人の所有するマンションや家屋といった資産の価値に影響を与えるようなデータも集まってしまう。そういった機微データが表に出ないよう管理しなければいけませんので、プラットフォームを構築していくうえでは十分に注意しなければいけません。

 NECとしては、プラットフォーム事業を実現するべく解析技術をさらに磨き、適切なパートナリングを念頭に置いて、われわれのビジョンである「社会を止めない。暮らしを止めない。宇宙から。」をもとに、あらゆるステークホルダーと連携しながら進めていくつもりです。

――自治体からのニーズが高まっているとのことですが、他社ではなくNECのデータを利用することにメリットを感じている部分もあるのでしょうか。

 衛星の元データをあえて提供していないのが、メリットと感じられているところはあるかもしれません。われわれは衛星データから導かれた情報を、たとえばGoogle Earthの画像の上に載せられるような形式でデータ提供しています。結果として、どこが危険なエリアなのか、というような結果が見た目にわかりやすい形で表示されるので、衛星データを自分たちで解釈する必要がありません。自治体の方にはそれがいいと好評なようです。

――独自の小型衛星を使ったリアルタイム性の高いモニタリングに今後力を入れていくようなことは?

 私個人としては、数年前までは、NECも宇宙ビジネスの中でそこに取り組んでもいいんじゃないか、と思っていました。ただ、NECは国の安全保障のような特殊な用途の大型・中型衛星は今も開発していますが、時間分解能を上げるために低コストの、多数の小型衛星開発には取り組んでおりません。

 ですので、小型SAR衛星のベンチャー企業などと連携するのが今のところの最適解だと考えています。彼らが持つ衛星の使用権みたいなものを買い取ることもできますので、そのときには衛星の撮像計画も含め、NECがASNARO-2を運用してきたノウハウが生きてくるはずです。

 ちなみに2018年に打ち上げたASNARO-2は、2023年に設計寿命を迎えますが、燃料を考えるとあと4年くらいは使える見込みです。次の自社衛星の計画は今のところありませんが、その計画につながるように一生懸命この事業を伸ばして、自社衛星を持っていればこれだけ強みができるんだ、ということを示していきたいですね。

――SARの領域において、日本として今後存在感を出していけるポイント、強みはどこにあるでしょう。

 しばらく前に外国政府の方にNECの防災ソリューションを紹介したことがあり、そこで言われたのが、日本は多くの災害に見舞われているけれど、その経験を生かして防災ソリューションとして展開できているのがすばらしい、ということでした。最近では土砂災害のある南米の国々から、NECの防災ソリューションを使いたい、というような問い合わせがたびたびあります。

 そうしたことから、たとえば災害にスピード感をもって対処するにはどうすればいいか、災害時に必要となる情報はどういうものなのか、といったところを含めて衛星データ解析の形でサービス提供する、ということが考えられます。災害大国であることを逆手にとってサービス展開していけるところは、日本ならではの強みではないかと思います。

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