インタビュー

自律制御はIT革命–「プロの宇宙飛行士」野口聡一氏が語る宇宙の近未来

2021.12.15 08:00

田中好伸(編集部)

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 Space Studio KIBOは、JAXAと民間事業者が協力するパートナーシップ型の研究開発プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(JAXA Space Innovation through Partnership and Co-creation:J-SPARC)」の一環であり、バスキュール(東京都港区、朴正義代表取締役)が実施した。

 宇宙メディア事業としてきぼうにある番組スタジオ「KIBO宇宙放送局」を開設して、宇宙と地上でリアルタイムにコミュニケーションを楽しめる、双方向ライブ番組配信だ。番組は2020年8月12日にきぼうと地上で双方向にライブ番組の配信に成功したので、記憶している方もいるかと思う。

 Kibo Avatar-XもJ-SPARCの一環。ANAホールディグスと同グループ傘下のavatarin(東京都中央区、深堀昂代表取締役 最高経営責任者)、きぼうの有償利用を支援する民間企業である有人宇宙システム(JAMSS、東京都千代田区、古藤俊一代表取締役社長)が実施した。

 きぼうに設置されている“宇宙アバター”を地上から操作できる。地上にいる一般人がきぼうにいる宇宙アバターをリアルタイムで直接動かして、きぼうの船内から宇宙や地球を眺めることができた。

自律制御でドッキングした「Crew Dragon」

 Virgin GalacticやBlue Originのように宇宙観光への可能性、Space Studio KIBOやKibo Avatar-XのようなISSのビジネス利用が進んでいる。宇宙という空間は、さまざまな形で民間企業でも利用できるようになっている。民間企業の宇宙進出と言って忘れてはいけないのが、Elon Musk氏が創業したSpaceXだ。

 今回、野口氏がISSにドッキングするために搭乗したのが、SpaceXが開発した有人宇宙船「Crew Dragon」(運用初号機であることから、ミッション番号は「Crew-1」)だ。Crew Dragonを打ち上げたロケット「Falcon 9」もSpaceXが開発した。野口氏はCrew Dragonで地球に帰還した(野口氏のもう一つのギネス世界記録は、スペースシャトルでの滑走着陸、Soyuzでの地上パラシュート降下、Crew Dragonでの海上着水という3つの異なる手段で地球に帰還したことだ)。

 このCrew Dragonは自律制御でISSとのドッキングに成功した。宇宙空間で活用される技術は得てして安定性を重視するために“枯れた”ものが多い。

 言ってしまえば、宇宙でのITの進歩は、地上に比べると遅い。ISSの船内の日常をYouTubeで見られるようになったのは、それほど古くない(野口氏はYouTubeにチャンネルを持っている)。こうした状況からCrew Dragonの自律制御について野口氏は「(宇宙での)IT革命そのもの」と言い表した。

「挑戦をやめない生き物を、人類と呼ぶ。」は今回の滞在のキャッチフレーズ。Falcon 9の隣にあるのがCrew-1のミッションバッチ、その隣にあるのが野口氏のISS長期滞在ミッションのJAXAロゴマーク
「挑戦をやめない生き物を、人類と呼ぶ。」は今回の滞在のキャッチフレーズ。Falcon 9の隣にあるのがCrew-1のミッションバッチ、その隣にあるのが野口氏のISS長期滞在ミッションのJAXAロゴマーク

 宇宙の民間利用が本格的に始まりつつある。プロの宇宙飛行士も含めて人類の挑戦は形を変えながらも継続していく。

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