特集

打ち上げ実績でSpaceXに次ぐ民間2位–Rocket Lab、垂直統合型ビジネスを語る

2022.08.29 14:07

小口貴宏(編集部)

facebook X(旧Twitter) line

 2022年7月19~21日の3日間、リアルとオンラインのハイブリッドで開催されたカンファレンス「SPACETIDE 2022」に、Rocket Labでビジネス開発担当副社長を務めるNavid Fatemi氏が登壇。同社が展開する垂直統合型の宇宙ビジネスについて説明した。

 Rocket Labは2022年7月末時点で累計28回のロケット打ち上げ、計148機の衛星を軌道に投入したという。これはSpace Exploration Technologies(Space X)に次いで「2番目にロケットの打ち上げ実績がある民間企業」だとFatemi氏は語る。また、同社は2021年8月25日に特別買収目的会社(SPAC)を通じてNASDAQにも上場している。

 また、同社がユニークなのは、ロケットの打ち上げに特化するのではなく、衛星部品の製造やフライトソフトウェアの開発なども手掛けるなど、垂直統合型のビジネスを展開する点だ。「ほとんどの衛星部品を提供できる」(Fatemi氏)といい、人工衛星のベースとなる「衛星バス」をはじめ、ソーラーパネルからスタートラッカー、バッテリー、自律安全飛行システムなども開発している。

 「垂直統合型の意味するところは、部品もやる、衛星もやる、打ち上げもやる。本社はロサンゼルスにあり、デンバーにフライトソフトウェアの開発拠点がある。その南のニューメキシコには世界最大の宇宙専用ソーラーパネルの製造施設、カナダのトロントにはスタートラッカーやリアクションホイールを製造する工場がある。セパレーションシステムやディスペンサーを開発する工場はメリーランド州に。バージニア州とニュージーランドにも打ち上げ施設がある」(Fatemi氏)

米国とカナダ、ニュージーランドに施設がある
Rocket Labが開発した「Photon」は衛星としての基本的な機能や部品を組み合わせた衛星バスだ

 垂直統合型のビジネスを展開することで、収入源も多様化できるという。ロケットの打ち上げ需要が低迷しても、衛星部品のビジネスでそれを補えるという。また、顧客は民間と政府で半々で、市況に影響されづらい点も同社の強みだとFatemi氏は語る。

顧客は民間と政府機関で半々

 現在、同社が主力としているロケットは、小型衛星の打ち上げ衛星専用に設計された「Electoron」だ。地球低軌道(LEO)に最大300kgを打ち上げることができ、これまでに148以上の衛星を軌道に投入してきた。また、米国とニュージーランドに計3つの打ち上げ拠点があり、最大で1週間で2回という高頻度での打ち上げが可能だという。

Electoronの概要

 そんな同社が次期主力ロケットとして開発しているのが「Neutron」だ。前述のElectronが小型衛星専用なのに対し、Neutronは衛星コンステレーションや有人宇宙飛行のマーケットを狙う。地球低軌道(LEO)に最大8トンのペイロードを投入できるという。炭素複合繊維を用いた軽量設計で、衛星を放出するフェアリング部品を含めた完全な再使用型となり、コストも抑えられるという。

Neutronの概要

 Fatemi氏はNeutronについて「あと2〜3年で実用化できる」と壇上で語った。

Related Articles