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世界で進む「超小型衛星革命」–生みの親が語る日本が乗り遅れる理由
2022.03.15 08:00
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大学との連携では2013年から始まった「Smallsat Technology Partnerships」(STP、小型衛星技術パートナーシップ)が知られる。ある年は通信系、別の年はフォーメーションフライトなど毎年テーマを決め、いい提案をした大学にNASAは予算と人を送り込む。宇宙技術に知見のあるNASA経験者が入り確実な開発を行う。
また大学で技術開発の経験を積んだ教授がNASAのプロジェクトのリーダーになるなど人材交流が盛んだ。「(STPは)NASAに超小型衛星プログラムができる一つのきっかけになっている。日本でもこのような人材交流も含めもっとやっていかないといけないのでは」と中須賀氏は訴える。
ESAはやや出遅れたものの、2018年ごろから深宇宙探査も含めて急速に超小型衛星への取り組みが加速しているという。一つの結果としてセンサーの超小型化が進んでいる。大学などが超小型衛星用のセンサーや機器を作ったら衛星プロジェクトで実証する。打ち上げというインセンティブが与えられるから、モチベーションが上がり開発が加速するという。
「大事なのは、衛星を宇宙に打ち上げる宇宙ミッションを継続的に実施すること。日本では衛星開発や打ち上げのための費用を科研費(科学研究費助成事業)や内閣府の予算を他分野と競争してとるしかない。継続した宇宙分野の超小型衛星への投資がなかった。一方、世界では官民からの投資で力をつけた企業が、今、世界の潮流である小型衛星コンステレーションの世界に乗り出している。SpaceX、Planet、Spireは、政府にも画像やデータを販売するビジネスを行っている」
日本はどう太刀打ちするのか。そこで開催されたのが「超小型衛星利用シンポジウム2022」だ。
世界の状況を知り、日本の立ち位置を確認し、危機感を共有する。「宇宙科学探査や地球観測など、日本における超小型衛星実用の可能性を探りたい。日本でも超小型衛星で意味のあるミッションを実現できる技術やノウハウがあり、挑戦できる人材が存在することを政府に示しましょう」。中須賀氏は大学や研究機関、企業関係者などに呼びかける。
宇宙探査や地球観測、技術分野などから30を超える発表
シンポジウムでは宇宙科学、探査、地球観測、超小型衛星の技術開発など6つのセッションで30を超える発表が行われた。
例えば東京都立大学、北海道大、JAXA宇宙研らによる「GEO-X」は地球磁気圏の大局的な構造の可視化を世界で初めて実現する超小型衛星だ。月付近の高度から広視野でX線による可視化を狙う。予算を既に獲得し、太陽活動の極大期である2023~2025年、H3ロケットなどの相乗り機会を狙い、打ち上げる予定だ。
一方、同じX線でも理化学研究所などが開発する「NinjaSat」はブラックホールや中性子星などX線で明るく輝く天体を観測、地上の望遠鏡と連携し多波長同時観測を狙う。最大の動機は若手研究者が宇宙で活躍する場を作ること。
大型の科学衛星の場合、プロジェトサイクルは10年を超え、研究者人生の間に実現する可能性が薄れつつある。そこで超小型衛星に注目。研究者は「結果を出してなんぼ」の世界。ペイロード(観測機器等)に全力投入するため、衛星バス部は購入することにしたものの国内にミッションに合うメーカーがなく、リトアニアの経験豊富な企業から購入した。2023年4月に米国のCygnus宇宙船でISSに運び、ISSから衛星を放出する予定だ。