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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が次に捉える驚異とは

2022.07.29 11:50

CNET Japan

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JWSTの観測に寄せられる期待

 この数カ月間、サイエンスライターである私は、あるフレーズを繰り返し耳にした。それは、「JWSTの観測まで待とう」というものだ。

 細かい言い回しは違っても、多くの人がこのフレーズを口にした。

 例を挙げよう。4月にハッブル宇宙望遠鏡が観測史上、最も遠くにある星を撮影した。この美しい恒星は、古英語で「明けの明星」を意味する「エアレンデル」と名付けられた。

 この星を発見したジョンズ・ホプキンス大学の研究グループの1人で、天文学者のBrian Welch氏は、「エアレンデルを研究することは、我々が知らない時代の宇宙、しかし、我々が現在知っていることすべてにつながった時代の宇宙を知るための方法となるだろう」と述べた。

エアレンデル(矢印、提供:NASA)
エアレンデル(矢印、提供:NASA)

 ここで思い出してほしい。JWSTには人間には見えない、はるか昔の宇宙を研究するための機器群が搭載されていることを。エアレンデルを発見したチームは、JWSTのレンズでエアレンデルを再び観測することにより、これが本当に単一の恒星なのかを確認し、その詳細を定量的に示そうと考えている。

 JWSTは、太陽系の青いガス惑星、海王星の謎も解明できるかもしれない。海王星では気温が低下しているが、その理由が分かってない。この謎に関する研究論文の共著者で、レスター大学の惑星科学者Leigh Fletcher氏は声明の中で、「JWSTのMIRIは極めて感度が高いため、海王星の大気の化学組成や温度について、未知の事実が明らかになる可能性がある」と述べた。

 大きすぎる重力ゆえに光さえも脱出できない超大質量のブラックホール、そして数十億年前に誕生し、急速に成長している奇妙なブラックホールの祖先の姿を明らかにしようとしている研究チームもある。

 「JWSTを使えば、急成長しているブラックホールが実際にはどれくらいありふれたものなのかを解明できる」と言うのは、コペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所の藤本征史氏だ。

 最後にJWSTに関して(少なくとも私にとっては)最も驚くべき事実を指摘しておきたい。それは、現時点でJWSTは地球外生命体、つまりエイリアンが存在する証拠を捉える可能性が最も高い方法だということだ。

 いつの日かJWSTが有機物を検出した際に、世間(私)がパニックにならないように、早々に誤検出を警戒している科学者もいる。しかし、実際にそのような日が来たら、私たちは間違いなく言葉を失い、心拍数は上がり、7月12日に最初の画像を見た時の感動は記憶の彼方に飛んでしまうに違いない。

 例えそのような日が来なくても、このNASAの最新の宇宙望遠鏡から、1995年に撮影された初のハッブルディープフィールドに匹敵する画期的な画像が届くのは、そう先の話ではないだろう。最も、現在の私たちにはそれが何かも想像すらできないのだ。

(この記事はCNET Japanからの転載です)

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