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Linuxとオープンソースが火星の空を飛ぶ–火星ヘリコプター「Ingenuity」

2021.02.26 06:30

ZDNet Japan

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 また同氏は、ソフトウェアに関して次のように述べている。

 火星でLinuxを飛ばすのは、これが初めてのことだ。私たちは実際にLinux OSを使用している。使用しているソフトウェアフレームワークは、私たちがJPLでキューブサットや機器用に開発したもので、数年前にオープンソース化した。したがって、誰でもこの火星用ヘリコプターで使用されているソフトウェアフレームワークを手に入れて、自分のプロジェクトで使うことができる。これは一種のオープンソースの勝利だ。私たちは、オープンソースのOSと、オープンソースのフライトソフトウェアフレームワークと、店で買える市販のパーツを飛ばそうとしており、いつか自分でもやってみたいと思えば、誰でも同じことができるのだから。

 Ingenuityに使われているオープンソースソフトウェアであるF’は、宇宙飛行やその他の目的の組み込み用ソフトウェアアプリケーションを迅速に開発、展開できるようにするためのコンポーネント指向のフレームワークだ。F´は、これまでにも何度も宇宙で利用するアプリケーションに使用されている。これはCubeSatsやSmallSatsなどの小規模な宇宙飛行用のシステムに合わせて作られたものだが、それ以外の用途にも使うことができ、今回は自律飛行するヘリコプターに使用されることになった。

 F’には次のものが含まれている。

  • フライトソフトウェアを明確に定義された個別のコンポーネントに分解するためのアーキテクチャー
  • メッセージキューやスレッドなどのコア機能を提供するC++のフレームワーク
  • コンポーネントとコネクションを指定し自動的にコードを生成するモデル化ツール
  • すぐに使えるコンポーネントの標準ライブラリー。その数は増え続けている
  • フライトソフトウェアの単体テストとシステムレベルのテストに使用できるテスト用ツール

 もちろん、NASAのオープンソースソフトウェアはほかにもたくさんある。NASA Open Source 3.0ライセンスを使用したソフトウェアプロジェクトの数は500を超えている。NASAは長年、コードを無料で共有してきた

 NASAは国際宇宙ステーション(ISS)でも長年Linuxを使用している。スーパーコンピューターのOSがLinuxばかりになる過程は、NASAのゴダード宇宙飛行センター(GSFC)にあったスーパーコンピューターである初代「Beowulf」から始まったといえるだろう。

 Ingenuityと同じく、初代のBeowulfのクラスターも商用オフザシェルフ(COTS)の機器で作られていた。このコンピューターは、16基の「Intel486 DX4」プロセッサーを使い、10Mbpsのイーサーネットを接続して作られたもので、開発費用はわずか数千ドルだった。その処理速度は1桁ギガフロップスにすぎなかったが、Beowulfはスーパーコンピューターをわずかな予算とLinuxで作れることを証明した。そして今回、Ingenuityは、安いハードウェアとLinuxとオープンソースを組み合わせることで、今でも素晴らしい成果を上げられることを証明しようとしている。

(この記事はZDNet Japanからの転載です)

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