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深刻化する宇宙ゴミ–人工衛星の増加で急務となる対策の整備
2023.01.06 08:00
軌道のスーパーハイウェイが急速に混雑していることを受けて、米連邦通信委員会(FCC)は先頃、衛星事業者に不要なゴミを軌道から取り除くことを義務づける新しい規則を可決した。この新規則の下では、地球低軌道を利用している衛星事業者は、任務を完了してから5年以内に、機能していない衛星を廃棄しなければならない。
新規則は、まだ国際社会に完全に受け入れられているわけではなく、米国の議員にも反対者がいる。それでも、宇宙ゴミの廃棄を任務完了から25年後と推奨する現行のガイドラインからは進歩した。宇宙業界には、5年後の廃棄を義務づける新規則の支持者が多い。これは、宇宙が有限の共有資源であることを業界が理解しているからだ。
「宇宙は真のグローバルコモンズだ。宇宙は上空に存在し、誰もその一部分でさえも所有していない」。衛星サービスプロバイダーInmarsatの副最高技術責任者(CTO)であるMark Dickinson氏は米ZDNETに対してこう語った。だからこそ、すべての衛星事業者が自社の宇宙飛行体を追跡することが重要だ。
「私が不運だと彼らに問題が起きる可能性があるし、同様に彼らが不運に見舞われると、私に問題が起きるかもしれない」
しかし、Jah氏らは、5年以内の廃棄を定めた新規則では十分でないと主張する。まず、国際規制当局が、規則に従わない者に対し、しかるべき措置を確実に講じる必要がある。Dickinson氏は、任務完了から25年以上にわたって宇宙を浮遊している衛星がすでにあると指摘した。これは現行のガイドラインの期間を超過している。
宇宙ゴミはできるだけ早く処理すべきであり、それができない場合は何らかの形で説明責任を果たす必要がある、とDickinson氏は述べた。
「事業者が『何か』をすると言って、そうしなかった場合、現状では実質的な罰則がない」と同氏は説明する。「誰かが1000個の宇宙飛行体をLEOに打ち上げて、そのうちの90%はきちんと廃棄したが、10%を放置した場合に、どんな罰があるかを定めた実質的な規則は存在しない」
さらに、規制当局は衛星企業が倒産した場合にどうするかという難題にも取り組む必要がある、とDickinson氏は付け加えた。
「廃棄せずに、新しい衛星の打ち上げをずっと続けていたら、空き領域がなくなってしまう」とDickinson氏。「また、寿命を迎えた衛星は、ゴミとして放置される。それらは受動衛星なので、衝突を避けることができない」
一方、宇宙ゴミを除去しなければならない衛星事業者は、「制御されない大気圏再突入」という方法で処理することが多い。これは、地球に落下している間に大気中で燃え尽きさせる方法だ。しかし、中国の長征5号Bロケットの先頃の墜落が実証したように、宇宙飛行体が大きければ大きいほど、完全に燃え尽きる可能性は低下する。大気中で燃え尽きても、残された化学物質が地球のオゾン層に損傷を与えるおそれがある、と研究者は指摘する。
そのため、米政府はFCCとホワイトハウスを通じて、宇宙空間での保守、組み立て、製造(ISAM)能力をサポートする可能性を模索している。ISAM能力には、衛星の壊れた部品の交換、新しい部品の製造、宇宙飛行体への燃料補給などを宇宙空間で行うことが含まれる可能性がある。
環境意識の高い人々が使い捨てプラスチックの使用を最小限に抑えようとするように、政府は使い捨て衛星の使用を禁止または最小限に抑制するよう努めるべきだ、とJah氏は主張する。
1967年の宇宙条約第11条で、政府は宇宙に打ち上げられるすべての物体を認可および監督する責任を負っている、とJah氏は指摘した。そのため、米国は理論上、宇宙事業者に打ち上げの認可を与える前に、衛星の再利用やリサイクルを可能にするよう要求することができる。
持続可能な宇宙業界を作り出す経済的なインセンティブがまだ存在しないことを考えると、そのような政治的命令が必要なのかもしれない。
「誰もが同意するように、これは今まさに記されようとしている業界の新たな1ページだ」。衛星接続会社OneWebの新市場担当バイスプレジデントを務めるMaurizio Vanotti氏は、宇宙の持続可能性に関する先頃のウェビナーでこう語った。しかし、同氏は続けて次のように述べた。「このビジネスの持続可能性に関しては2つの側面がある。1つはビジネスモデルで、もう1つは技術的アプローチだ。この2つをうまく連携させなければならない」
Vanotti氏によると、軌道上に600基以上の衛星を有しているOneWebは、創設以来、「責任あるアプローチ」を取っており、製造する衛星にドッキング機能を組み込んで、何らかの障害が発生した場合に別の宇宙飛行体と結合できるようにしているという。
だが、現時点では、衛星事業者が衛星の回収だけを目的とするミッションを開始することは、ビジネス上あまり意味がない。Jah氏も、実質的にリサイクルステーションを軌道上に設置する必要があるとの考えだ。
Jah氏は、強固な循環型宇宙経済が実現するまでには多くの障害があることを認めている。
「どれも一朝一夕では実現しないものだ」とJah氏。「実際のところ、明らかになる可能性があるものだが、今すぐ着手しなければ確実に実現しないだろう」
(この記事はZDNet Japanからの転載です)