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ElevationSpaceとルクセンブルク企業、高頻度サンプルリターンサービスで提携

2025.07.18 09:00

UchuBizスタッフ

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 ElevationSpace(仙台市青葉区)とルクセンブルクExobiosphereは宇宙空間の微小重力環境を活用した創薬実験の成果を地球に回収する高頻度サンプルリターンサービスの実現に向けて基本合意書(MoU)を締結した。7月17日に発表した。

 今回の提携では、Exobiosphereのハイスループットスクリーニングシステム「Orbital High-Throughput Screener(OHTS)」をElevationSpaceが開発しているフリーフライヤー型軌道上実証・回収衛星「ELS-R」や宇宙ステーションからの高頻度回収カプセル「ELS-RS」に搭載して、宇宙空間での創薬実験などの成果を迅速に回収して、地上での研究開発を加速することを目指して業務提携する。

 OHTSは、Exobiosphereが開発中の小型で高密度の宇宙実験モジュール。微小重力下で数千の細胞や分子サンプルを同時に扱えるという高スループット設計であるとし、薬剤応答や疾患モデルの経時観察が可能という。

 宇宙空間の微小重力環境では、地上と比較して細胞老化や特定疾患の進行が加速することが明らかになっているという。この特性を活用した創薬での「スクリーニング」の高速化や高精度の疾患モデルの開発が可能と説明する。

 スクリーニングとは、膨大な薬の候補物質や細胞の中から特定の機能や効果を持つものを効率的に見つけ出す手法。創薬では、病気に有効な薬剤候補を見つけ出すために数千や数万という種類の化合物を使って目的の生物学的反応を示すものを選別することを指す。

 Exobiosphereは、微小重力環境では地上と比較して細胞老化や特定疾患の進行が加速するという現象に着目して、宇宙空間で数千から数万というサンプルを同時にスクリーニングできるシステムとしてOHTSを開発している。

OHTS(出典:Exobiosphere)
OHTS(出典:Exobiosphere)

 スクリーニングの結果は、データ通信で地上に送信されるが、詳細な分析は地上の研究施設で実施する必要がある。従来の国際宇宙ステーション(ISS)での実験では、地球に帰還する「帰りの便」が限られているため、スクリーニングの高速化に向けた障壁となっているという。

 ElevationSpaceが開発しているELS-RやELS-RSを活用すれば、宇宙空間での実験の成果をタイムリーに回収でき、地上での創薬の研究開発プロセスを高速化できると説明。ELS-RSは、宇宙ステーションから月1回の回収機会の提供を目指しており、従来の有人宇宙船による年3~4回の回収機会と比較して大幅な高頻度化が実現できるとしている。

 両社は、OHTSをELS-RやELS-RSに搭載するためのインターフェース、創薬分野の回収サプライチェーンの最適化に向けた共同研究に取り組んで、ISSや「ポストISS」の民間宇宙ステーション、フリーフライヤーでのデモミッションの実現に向けて共同で進めていく。海外や日本の製薬会社をはじめとする顧客開拓についても共同で展開していく。

(左から)Exobiosphere 最高経営責任者(CEO) Kyle Acierno氏、ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平氏。大阪・関西万博のルクセンブルクパビリオン前で撮影(出典:ElevationSpace)
(左から)Exobiosphere 最高経営責任者(CEO) Kyle Acierno氏、ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平氏。大阪・関西万博のルクセンブルクパビリオン前で撮影(出典:ElevationSpace)

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