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中国、マレーシア赤道付近の宇宙港開設を検討–初の海外打ち上げ拠点を確保へ

2025.04.30 18:27

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 中国は、初の海外打ち上げ拠点としてマレーシアの赤道付近に宇宙港を設置することを検討している。現地メディアのNew Strait Timesが報じた

 中国の国有宇宙企業である中国長城工業集団(China Great Wall Industry Corporation:CGWIC)は、マレーシア・パハン州の州開発公社(Perbadanan Kemajuan Negeri Pahang:PKNP)、同国の宇宙関連民間企業Lestari Angkasa(レスタリ・アンカサ)と1年間にわたる宇宙港の実現可能性の調査で合意した。このプロジェクト「パハン国際宇宙港(Pahang International Spaceport)」は、2000人以上の雇用を生み出すことが期待されており、観光などの経済効果をもたらす可能性があるという。

 パハン国際宇宙港は北緯3〜4度の赤道付近で、地球の自転速度を最大限に生かせるため、打ち上げ効率が高く、より重いペイロードの投入が可能になる。マレーシア国営通信社のBernamaによれば、プロジェクトが承認されれば、完成までは3〜5年かかる見込みだという。

 5月には、PKNPとLestari Angkasaの代表団が中国海南島の文昌宇宙都市を訪問し、プロジェクトの詳細を協議する予定だ。

 中国は現在、打ち上げ能力の飽和に直面しており、新たな発射施設はそれを緩和する助けになる。パハン国際宇宙港は商業や民間を対象にしたミッションの選択肢となり、機密性の高い国家的ミッションには使われにくいと見られている。文昌衛星発射場でも商業打ち上げ施設の新設が進められている。

 中国航天科技集団(CASC)傘下のCGWICは、中国政府から衛星の提供や商業打ち上げサービス、国際宇宙協力の実施を認可された唯一の商業組織という。

 中国は2024年に年間100回の打ち上げを目指していたが、結果は68回にとどまり、商業ロケットの30回の打ち上げも未達となった。

 中国の国家主席である習近平氏は4月15~17日にマレーシアを訪問。両国は宇宙分野での協力強化の大きな可能性を認識する共同声明を4月17日に発表した。

(出典:CGWIC)
(出典:CGWIC)

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共同声明
New Strait Times
Bernama
SpaceNews

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