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ispace着陸船「レジリエンス」、月周回軌道投入前のマヌーバ完了–月着陸まで1カ月強

2025.04.25 14:30

UchuBizスタッフ

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 ispace(東京都中央区)が進める民間月探査計画「HAKUTO-R」のミッション2「SMBC×HAKUTO-R VENTURE MOON」で日本時間4月24日午後7時に月周回軌道投入(Lunar Orbit Insertion:LOI)前に予定していたすべての深宇宙軌道制御マヌーバが完了した。ミッション2のマイルストーンのサクセス6を完了したことになる。

 東京・日本橋にあるミッション・コントロール・センター(管制室)からispaceのエンジニアが運用計画に沿って、午後7時に8回目の軌道制御マヌーバを着陸船(ランダー)「RESILIENCE」に指示。このマヌーバでRESILIENCEを月周回軌道に投入する前に予定していた、すべての軌道制御マヌーバが完了した。

 現在RESILIENCEは計画通りの軌道で安定した状態を保っており、5月7日に予定している、マイルストーンのサクセス7である「月周回軌道への到達」に備える。今後、月周回軌道投入マヌーバに向けた最終調整を経て、RESILIENCEは月を周回する軌道(月の重力圏)に入る予定。月着陸は6月6日を予定している

 RESILIENCEは、日本時間1月15日午後3時11分に打ち上げられた米Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)のロケット「Falcon 9」で所定の軌道に投入され、同日午後4時44分に分離された。

 地球周回フェーズを経て2月15日午前7時43分には月表面から高度約8400㎞の地点を通過し、民間企業による商業用ランダーとしては史上初となる「月フライバイ」に成功した。その後、低エネルギー遷移軌道上を約2カ月間、地球から最も離れた距離で約110万kmの地点まで到達する深宇宙の旅を続けている。

現在は低エネルギー遷移軌道を飛行している(出典:ispace)
現在は低エネルギー遷移軌道を飛行している(出典:ispace)

 ミッション2は、前回のミッション1と同様に月面に着陸するまでの10段階のマイルストーンが設定されており、マイルストーンごとの成功基準(サクセスクライテリア)を決めている。ミッション1と同様にミッションに途中で課題が発生しても、その事象だけを捉えて、単なる失敗と評価しないという考えがあるからだ。

  • サクセス 1=打ち上げ準備の完了(-2~3日前)=成功
    • ランダーすべての開発工程の完了
    • 打ち上げロケットへの搭載完了
    • 世界のさまざまな地域で柔軟にランダーを組み立てられる能力を実証
  • サクセス 2=打ち上げと分離の完了(+1時間後)=成功
    • ロケットからランダーの分離完了
    • ランダーの構造が打ち上げ時の過酷な条件に耐えられること、設計の妥当性を再確認するとともに将来の開発やミッションに向けたデータを収集
  • サクセス 3=安定した航行状態の確立(+数時間後)=成功
    • ランダーと管制室の通信を確立し、姿勢の安定を確認するとともに軌道上での安定した電源供給を確立
  • サクセス 4=初回軌道制御マヌーバの完了(+1~2日後)=成功
    • 初回の軌道制御マヌーバを実施、ランダーを予定軌道に投入
  • サクセス 5=月スイングバイの完了(+1カ月後)=成功
    • 打ち上げ後1カ月で月スイングバイを完了
    • 深宇宙航行を開始
  • サクセス 6=月周回軌道投入(Lunar Orbit Insertion:LOI)前にすべての深宇宙軌道制御マヌーバの完了(+3~3.5カ月後)=成功
    • 太陽の重力を利用したすべての深宇宙軌道制御マヌーバを完了し、月周回軌道投入マヌーバの準備を完了
    • 深宇宙でのランダー運用能力と航行軌道計画を再実証
  • サクセス 7=月周回軌道への到達(+4カ月後)
    • 最初の月周回軌道投入マヌーバによるランダーのLOI完了
    • ランダーとペイロードを月周回軌道に投入する能力を再実証
  • サクセス 8=月周回軌道上でのすべての軌道制御マヌーバの完了(+4.5カ月後)
    • 着陸シーケンスの前に計画されているすべての月軌道制御マヌーバを完了
    • ランダーが着陸シーケンスの開始準備ができていることを実証
  • サクセス 9=月着陸の完了(+4.5カ月後)
    • 月面着陸を完了させ、今後のミッションに向けた着陸能力を実証
  • サクセス10=月着陸後の安定状態の確立(+4.5カ月後)
    • 着陸後の月面での安定した通信と電力確保を確立
4月24日時点でサクセス6が完了した(出典:ispace)
4月24日時点でサクセス6が完了した(出典:ispace)

 RESILIENCEは、以下の貨物(ペイロード)を搭載して、月まで運んでいる。

  • 高砂熱学工業=月面用水電解装置
  • ユーグレナ=月面環境での食料生産実験を目指した自己完結型モジュール
  • 台湾・国立中央大学宇宙科学工学科=深宇宙放射線プローブ
  • バンダイナムコ研究所=GOI宇宙世紀憲章プレート
  • ispace欧州法人ispace EUROPE=小型探査車(マイクロローバー)「TENACIOUS
  • スウェーデンのアーティストMikael Genberg氏による「ムーンハウス」

関連情報
ispaceプレスリリース

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