
ニュース
「宇宙戦略基金」第二期の13テーマ案を文科省が公開–軌道上サービスや月面開発など1550億円
2025.03.12 08:00
文部科学省は3月11日、「宇宙戦略基金の推進に関する検討会」を開催。その中で、「宇宙戦略基金」第二期の実施方針の素案を公開した。技術開発テーマとして全13テーマ案を設定し、総額1550億円(管理費45億円を含む)を投資する。3月中に総務省(予算450億円)や経済産業省(予算1000億円)からもテーマ案が公開され、正式決定後にJAXAより順次公募が始まる予定。

輸送(総額185億円)
輸送分野については、「スマート射場の実現に向けた基盤システム技術」が総額85億円(支援期間は最長5年)、「有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術」が総額100億円(支援期間は最長3年)となる。
新たな宇宙輸送ビジネスの創出や非宇宙分野のプレーヤーの参入促進を目指し、新たな宇宙輸送システムに対応するための基盤技術の獲得や、民間事業化を見据えた打ち上げに係る地上システムの運用効率化に向けた技術開発に重点的に取り組む。

衛星等(総額605億円)
衛星等分野は、大きく「衛星」と「軌道上サービス」がある。衛星では「次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術」が総額100億円(支援期間は最長6年)、「地球環境衛星データ利用の加速に向けた先端技術」が総額40億円(支援期間は最長6年)となる。
次世代の国際競争力のある地球観測衛星を活用した新たなビジネスの創出・強化を目指して、民間事業者等の技術基盤強化のための観測機能高度化や、学術界・非宇宙分野等のプレーヤーを巻き込んだ、新たな衛星データ利用ビジネスの創出に向けた先端技術開発に重点的に取り組む。

軌道上サービスは、「空間自在移動の実現に向けた技術」が総額300億円(支援期間は最長6年)、「空間自在利用の実現に向けた技術」が総額165億円(支援期間は最長5年)となる。
先行者優位に照らした早期の実証や、新たなプレーヤーの参画と相互連携を通じた厚みの形成、一体的な国際展開を視野に入れつつ、宇宙空間の移動や、軌道上での製造・除去等に自在性をもたらす新たなシステムの構築に向けた技術開発に重点的に取り組む。

探査等(総額505億円)
探査等分野は、大きく「地球低軌道利用」と「月面開発」がある。地球低軌道利用では、「軌道上データセンター構築技術」が総額135億円(支援期間は最長5年)、「船外利用効率化技術」が総額65億円(支援期間は最長5年)、「高頻度物資回収システム技術」が総額25億円(支援期間は最長3年)となる。
商業宇宙ステーションが台頭する2030年以降(ポストISS)の新たなビジネスの創出と民間事業者の事業化へのコミットの拡大を図る。そのために、拡大・多様化するニーズを捉えた地球低軌道利用の効率化・高頻度化や、それらの基盤となり得る高度データ処理に係る技術開発に重点的に取り組む。

月面開発は、「月面インフラ構築に資する要素技術」が総額80億円(支援期間は最長5年)、「月極域における高精度着陸技術」が総額200億円(支援期間は最長4年)となる。
将来の月面経済圏の創出を見据え、非宇宙分野の事業者の参入を促進しつつ、将来の月面活動の前提となるデータ取得及び重要技術の早期獲得につながる要素技術の開発や、これらの輸送を担う国際競争力の高い高精度着陸に係る技術開発に取り組む。

分野共通(総額210億円)
輸送、衛星等、探査等をまたぐ分野共通は、「宇宙転用・新産業シーズ創出拠点」が総額110億円(支援期間は最長5年)、「SX中核領域発展研究」が総額100億円(支援期間は最長3年)となる。
独創的な研究開発への支援に対する高いニーズを受け止めつつ、宇宙分野への関与・裾野拡大及び新たな宇宙産業・利用ビジネスの創出に重点を置いた拠点化や、一定の領域のもとで要素技術や研究者のアイデアを早期に初期実証することで、広く技術力の底上げを図る。

第一期の状況は?
2024年7月に公募が始まった第一期については、全22テーマに対して130件、247社の応募があったという。そのうち55%が民間企業(大企業22%、中小企業8%、スタートアップ25%)、36%が大学等からの応募だった。また、40%がいわゆる非宇宙企業からの応募だったという。
全22のテーマに対して、21テーマの採択事業者が決まっている。たとえば、「⽉-地球間及び⽉面での大容量通信実現に向けた実現可能性検討」にはKDDIが、「再⽣型燃料電池システム」にはトヨタ自動車が選ばれた。「⽉⾯の⽔資源探査技術(センシング技術)の開発・実証」のみ採択者がいなかったため再公募をかけている。

関連情報
文部科学省サイト