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地球全体の二酸化炭素濃度、年増加量が過去14年間で最大に–「いぶき」観測

2025.02.07 08:00

UchuBizスタッフ

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 二酸化炭素とメタンの濃度を宇宙から観測する衛星「いぶき」(GOSAT)が2023~2024年に観測した二酸化炭素濃度の年増加量が観測開始以降最大の年間3.5ppmとなった。2月6日に発表された。

 二酸化炭素の全大気平均濃度は2010年には388ppmだったが、その後右肩上がりに上昇し、2024年には421ppmを越えた。年増加量は、過去14年間の平均値は年間2.4ppmだったが、2024年には年間3.5ppmとなり、今までの最高値(2016年の年間3.1ppm)を上回った。

 2023~2024年の年増加量が過去14年間で最大となった理由としては、2023~2024年に発生していたエルニーニョ現象に起因する高温や干ばつ、森林火災による二酸化炭素排出量の増加、陸域植生の面積や光合成量の減少、人間に起因する二酸化炭素排出量の増加の影響などが考えられるとしている。その解明に向けて、今回のデータだけでなく、GOSATシリーズのデータ全体を使った詳細な解析を今後進めていく予定としている。

いぶきによる二酸化炭素の全大気平均濃度の年平均値(黒折れ線、2010~2024年)とその年増加量(赤棒、2011~2024年)(出典:JAXA、NIES、環境省)
いぶきによる二酸化炭素の全大気平均濃度の年平均値(黒折れ線、2010~2024年)とその年増加量(赤棒、2011~2024年)(出典:JAXA、NIES、環境省)

 ここでの「年平均濃度」はいぶきによる全大気平均濃度の月別値12カ月分の単純平均値。「年増加量」は年平均濃度の前年からの増加量を指している。例えば、「2010~2011年の年増加量」は「2011年の年兵器濃度」から「2010年の年平均濃度」を引いたもの(いぶきの観測は2009年4月に開始されたため、年平均濃度のデータは2010年以降、年増加量のデータは2011年以降に限られる)。

 世界気象機関(WMO)を含む世界のいくつかの気象機関でも、地表面の各地の観測地点やそれらのデータを用いて算出した地上での二酸化炭素の全球平均濃度を発表している。しかし、二酸化炭素は高度によって濃度差があるために、地上観測点だけの濃度データでは地球大気全体の濃度を表すことができないとされている。

 GOSATシリーズでは、二酸化炭素の地表面濃度ではなく、地表面から大気上端までの大気中の二酸化炭素全体を観測可能。気候変動に関する政府間パネルの報告書などに記載されている将来の二酸化炭素濃度は「全大気」の平均濃度であることから、今後の二酸化炭素の増加による地球温暖化のリスクを算出、予測する上では、地球全体の二酸化炭素の平均濃度の算出が重要であり、上空の大気まで含めた「全大気」を把握することが不可欠とされている。

 いぶきの全大気平均濃度(二酸化炭素)はいぶきの2種類の標準プロダクトである「L2 CO2カラム量(SWIR)」と「L4B 全球CO2濃度」から雲や海陸分布などの影響を考慮して算出される。これらのプロダクトの検証、補正には地上観測データも使用している。

 いぶきは「温室効果ガス観測技術衛星(Greenhouse gases Observing SATellite:GOSAT)」シリーズの1号機。同シリーズは宇宙航空研究開発機構(JAXA)や国立環境研究所(NIES)、環境省(MOE)が連携して推進している地球観測衛星プロジェクト。2009年に1号機、2018年に2号機として「いぶき2号」(GOSAT-2)が打ち上げられた。

 2025年度に3号機として温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」(Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle)が「H-IIA」ロケット50号機で打ち上げられる予定。

関連情報
プレスリリース
GOSATプロジェクト
GOSAT(JAXA第一宇宙技術部門)

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