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【速報】ispaceの月着陸船「レジリエンス」が月に向けて打ち上げ成功–従業員や家族が見守る中
2025.01.15 15:16
ispace(東京都中央区)は1月15日、月探査計画「HAKUTO-R」のミッション2「SMBC×HAKUTO-R VENTURE MOON」となる月着陸船(ランダー)「RESILIENCE」(レジリエンス)を打ち上げた。日本時間の15時11分に打ち上げられ、16時43分ごろにロケットからランダーが切り離された。今後はランダーとの通信の確立を目指す。
ランダーは、米国のケネディ宇宙センターでSpace Exploration Technologies(SpaceX)のロケット「Falcon 9」によって無事に打ち上げられた。また、同じく月着陸を目指す米Firefly Aerospaceのランダー「Blue Ghost」と、史上初の相乗り(ライドシェア)という形での打ち上げとなった。
同日には、打ち上げを記念したパブリックビューイングイベントが都内で開催された。従業員の家族や企業・政府関係者、さらに元宇宙飛行士の山崎直子氏など約300名が招待され、会場でSpaceXのライブ配信を見守った。ロケット打ち上げやランダー分離の成功の瞬間には参加者から大きな歓声が上がった。
月探査計画「HAKUTO-R」ミッション2の内容は?
今回のランダーで月まで運ばれる貨物(ペイロード)は、HAKUTO-Rのコーポレートパートナーである高砂熱学工業の月面用水電解装置、ユーグレナの月面環境での食料生産実験を目指した自己完結型のモジュール、台湾の国立中央大学 宇宙科学工学科が開発する深宇宙放射線プローブ、バンダイナムコ研究所の「GOI宇宙世紀憲章プレート」、スウェーデンを拠点とするアーティストであるMikael Genberg氏が取り組む「ムーンハウス」などだ。
ミッション1でもさまざまなペイロードを搭載していたが、今回のミッション2では、ispaceの欧州法人ispace EUROPEが独自に設計、製造した小型探査車(マイクロローバー)「TENACIOUS」(テナシアス、「粘り強い」という意味)も搭載される。
前回と同様にミッション2では、着陸時に舞い上がってランダーの脚に堆積する月面の砂(レゴリス)の所有権を米航空宇宙局(NASA)に譲渡する。ミッション2では、TENACIOUSに搭載されたスコップで採取、撮影するレゴリスの所有権もNASAに譲渡する(RESILIENCEのレゴリスは日本本社が、TENACIOUSのレゴリスは欧州法人がそれぞれNASAと契約している)。
ミッション2でも10段階の「マイルストーン」を設定
今回のミッション2は、前回のミッション1と同様に月面に着陸するまでの10段階のマイルストーンを設定しており、マイルストーンごとの成功基準(サクセスクライテリア)を決めている。ミッション1と同様にミッションに途中で課題が発生しても、その事象だけを捉えて、単なる失敗と評価しないという考えがあるからだ。
- サクセス 1=打ち上げ準備の完了(-2~3日前)
- ランダーすべての開発工程の完了
- 打ち上げロケットへの搭載完了
- 世界のさまざまな地域で柔軟にランダーを組み立てられる能力を実証
- サクセス 2=打ち上げと分離の完了(+1時間後)
- ロケットからランダーの分離完了
- ランダーの構造が打ち上げ時の過酷な条件に耐えられること、設計の妥当性を再確認するとともに将来の開発やミッションに向けたデータを収集
- サクセス 3=安定した航行状態の確立(+数時間後)
- ランダーと管制室の通信を確立し、姿勢の安定を確認するとともに軌道上での安定した電源供給を確立
- サクセス 4=初回軌道制御マヌーバの完了(+1~2日後)
- 初回の軌道制御マヌーバを実施、ランダーを予定軌道に投入
- サクセス 5=月スイングバイの完了(+1カ月後)
- 打ち上げ後1カ月で月スイングバイを完了
- 深宇宙航行を開始
- サクセス 6=月周回軌道投入(Lunar Orbit Insertion:LOI)前にすべての深宇宙軌道制御マヌーバの完了(+3~3.5カ月後)
- 太陽の重力を利用したすべての深宇宙軌道制御マヌーバを完了し、月周回軌道投入マヌーバの準備を完了
- 深宇宙でのランダー運用能力と航行軌道計画を再実証
- サクセス 7=月周回軌道への到達(+4カ月後)
- 最初の月周回軌道投入マヌーバによるランダーのLOI完了
- ランダーとペイロードを月周回軌道に投入する能力を再実証
- サクセス 8=月周回軌道上でのすべての軌道制御マヌーバの完了(+4.5カ月後)
- 着陸シーケンスの前に計画されているすべての月軌道制御マヌーバを完了
- ランダーが着陸シーケンスの開始準備ができていることを実証
- サクセス 9=月着陸の完了(+4.5カ月後)
- 月面着陸を完了させ、今後のミッションに向けた着陸能力を実証
- サクセス10=月着陸後の安定状態の確立(+4.5カ月後)
- 着陸後の月面での安定した通信と電力確保を確立
また、ミッション2では、月着陸後の「アチーブメント」も設定している。
- ベンチャー1=ペイロード運用の開始
- ペイロードシステムの安定状態を確認し、電力供給、通信、熱管理を行いながら、月面での運用を開始
- ベンチャー2=ローバー展開
- マイクロローバーの安定状態を確認し、月面に展開
- ベンチャー3=ローバーの月面走行と通信の確立
- マイクロローバーの太陽電池パネルとアンテナを展開
- 月面での自立走行を開始し、マイクロローバーとランダーの通信を確立
- ベンチャー4=ローバー搭載スコップでレゴリスを採取
- マイクロローバーに搭載されたスコップでレゴリスを採取したことを確認
- NASAとの契約での第1段階、レゴリス採取を完了
- ベンチャー5=すべてのペイロードの運用完了
- ランダーとペイロードに搭載したすべてのペイロードの月面運用を完了