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スペースデータなど、宇宙の物理現象をデジタルに再現する技術を共同で開発

2025.01.10 16:00

UchuBizスタッフ

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 スペースデータ(東京都港区)とギャラクーズ(東京都豊島区)は宇宙の物理現象をデジタル上に再現する技術を共同で開発する。1月9日に発表した。

 スペースデータは、デジタル技術で宇宙をインターネットのように身近にすることで誰もが宇宙開発に参加できる未来を目指していると説明。具体的には国際宇宙ステーション(ISS)の3Dモデルや実際のISS内部の環境をデジタル上に再現する「バーチャルISS」を開発している。

 バーチャルISSでは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力して、微小重力環境や気流などの宇宙ステーション特有の環境をデジタル上に忠実に再現しているという。月や火星などの多様な物理環境である天体をデジタル上に再現する「太陽系デジタルツイン」の開発も進めている

 ギャラクシーズは、物理現実に極めて近い仮想現実の中で豊かな社会活動を実現するために必要な技術の開発に取り組んでいるとしている。国内外の大学や国立研究所の第一線で活躍する物理学や人工知能の分野の研究者による、自然現象を高精度で再現するシミュレーション技術で豊富な実績があると説明する。

 ギャラクシーズの物理シミュレーション技術をバーチャルISSや太陽系デジタルツインに加えることで、これまで専門家だけがアクセスできていた「宇宙物理の知」を民主化すると共同開発の意義を解説している。

 両社は(1)微小重力下での流体・剛体相互作用シミュレーション、(2)宇宙放射線のシミュレーション、(3)AI(人工知能)を活用した物理シミュレーション――などの技術を共同で開発する。

 (1)の微小重力下での流体・剛体相互作用シミュレーション技術では、ISSや月、火星など異なる重力環境では流体の特性が大きく変化するが、水や空気など流れのある「流体」と金属のように固い「剛体」が互いにどのように影響し合うのかをコンピューターシミュレーション技術で解析する。宇宙機や宇宙基地の設計解析、水循環装置を含むトイレやシャワーなど水に関連する設備の設計や運用解析、宇宙実験の事前検証も可能になるという。

 宇宙では高エネルギーの宇宙放射線が飛び交っており、衛星の軌道や月面で宇宙放射線は宇宙機の電子機器や材料に深刻な影響を与える可能性がある。誤作動や破損、材料の劣化を引き起こすこともある。

 (2)の宇宙放射線のシミュレーション技術では、宇宙放射線をシミュレーションすることで設計の最適化や材料の選定が可能になり、ミッションの成功率を高めることができるとしている。この技術は、月探査など宇宙の長期滞在のミッション設計や安全性評価にも応用できると説明する。

 高度な物理シミュレーションは精度が高いが、計算コストが大きくなるという課題もある。精度をできる限り維持しながら計算コストを削減する一つの手段として、機械学習ををはじめとするAI技術の活用が注目されるようになっている。

 (3)のAIを活用した物理シミュレーションでギャラクシーズは物理シミュレーションを実行するだけでなく、そのシミュレーション結果をAIの学習データとして活用することで物理シミュレーションの高速化を目指す。

関連情報
スペースデータプレスリリース(PR TIMES)

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