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3機の衛星、予定よりも早く大気圏で燃え尽きる–太陽極大期の「被害者」?
11月初旬、豪カーティン大学で開発された超小型衛星(キューブサット)「Binar」が地球の大気圏に降下し燃え尽きたことが海外メディアのThe Conversationで報じられた。
高度2000km以下の地球低軌道(LEO)にある衛星は、いずれ高度を下げ大気圏で燃え尽きる。しかし今回の「Binar-2」「Binar-3」「Binar-4」は2カ月と予定していた3分の1の期間で大気圏に突入した。これは2021年9月に運用が開始され、約1年間軌道を周回した「Binar-1」よりもずっと短い。
太陽の活動が活発化すると、太陽のエネルギーが地球の大気圏の外部に吸収され、大気圏は外側に膨らむことになる。高度1000km未満の軌道を周回する衛星に対する大気の抵抗が大幅に増加してしまう。つまりは、衛星の軌道を乱して、地表に向かって衛星を落下させる力が増加することを意味している。
国際宇宙ステーション、ほかには例えば「Starlink」のような商業衛星や大型衛星であれば、推進装置(スラスター)が搭載されており、地表に向かって落下させる力の影響を打ち消すことができる。しかし、Binarのような大学が開発、運用する衛星には、スラスターのような高度を調整する機器が搭載されていない。そのため、太陽の活動による影響を直接受けることになる。
太陽の活動には黒点、太陽フレア、太陽風などがあり、この活動は太陽の磁場が変化することで生じ、11年ごとに完全に反転する。このサイクルの中間点では太陽活動は最も活発になり、オーロラが数多く確認されたり、人工衛星の電気部品が損傷したり、故障したりする可能性がある。
The Conversationに掲載された記事を執筆した、カーティン大学のKyle McMullan氏によれば、Binarが早期に落下したことで、より正確な宇宙天気予報の必要性が浮き彫りとなったと説明。良いニュースとしては、太陽活動は2026年までに減速し、2030年には極小期に戻ると予測されていることを挙げている。
Binar-2、Binar-3、Binar-4は大きさが1U(10cm×10cm×10cm)。Binarシリーズは同大学の「Binar Space Program」で開発された。日本のSpace BDが提供する「超小型衛星放出サービス」を利用して、日本の千葉工業大学が開発したキューブサット「SAKURA」などと一緒にISSの日本実験棟「きぼう」から8月下旬に放出された(放出の様子はYouTubeで見ることができる)。