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つくば市で「後付け」自動運転を実証実験–衛星からの位置情報をcm単位で補正
2024.09.19 08:30
9月30日~10月9日に茨城県つくば市で自動運転システム「YADOCAR-iドライブ」の実証実験が進められる。つくば市のつくばセンター地区にあるペデストリアンデッキで子どもを乗せて自動走行する(レベル2)。
YADOCAR-iは、車載機器の専門商社である東海クラリオン(名古屋市中区)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が新事業創出プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の枠組みで共創活動を進めている自動運転システム。
東海クラリオンなどが開発する、自動運転技術を既存の車両に後付けできるというYADOCAR-iには、JAXAが研究開発に取り組んでいる高精度単独測位システム「MADOCA-PPP」を活用している。
MADOCA-PPPは、米GPSなど複数の測位衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)に対応した、高精度な軌道時刻を推定できるというソフトウェア「MADOCA」(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis)で生成された補強情報でセンチメートル級で測位できるという。位置情報としては準天頂衛星システム(Quasi-Zenith Satellite System:QZSS)「みちびき」も活用している。
今回の実証実験では、時速20km未満で走るYADOCAR-iに子どもを乗せて走行。測位の精度向上と高速化を実証する。
YADOCAR-iは、ドライバーが運転することでGNSSの位置情報を記録するとともに、光を活用したLiDAR(Light Detection And Ranging)センサーで障害物を検知し、AI(人工知能)が走行ルートのマップを生成する。
生成されたマップをもとにYADOCAR-iがルートを数回走ることでAIがルートをさらに学習して、マップの精度を高めていく。取得されたデータをもとに慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:IMU)センサーが加速度や向きなど検知してコンピューターが自動で運転する。
ドライバーがいない状態での自動運転では、マップのデータと周辺の障害物や歩行者などの状況を判断して、障害物を回避したり停止したりする。
つくば市や東海クラリオン、JAXAは8月31日に、子どもの安全な移動を支援する「こどもMaaS」サービス可能性調査事業の共同実施について協定を締結した。こどもMaaSは「低速自動運転モビリティ」で子どもや保護者などの外出を支援する移動サービス。
日本を含めた世界で開発が進む自動運転車は、移動が困難という事態への解決策として期待されている。しかし、非常に高額であり、実用化に向けたコストバランスが取れていないと指摘されている。
YADOCAR-iを開発する東海クラリオンは、地域内の新しい移動手段として過疎地域で移動に困っている高齢者の外出促進、観光地の周遊など地域一体となって魅力作りと経済の活性化を目指しているという。
YADOCAR-iのように時速20km未満で公道を走られる電動車を活用した小さな移動サービス「グリーンスローモビリティ」(グリスロ)をベースに、最小限の機材で走行するローコストな低速自動運転車をレンタルサイクルや電動キックボードのような感覚で誰でも手軽に使える移動サービスとなるための実証実験が各地で進められているという。つくば市でも2~3年後の導入を見据えている。
つくば市は、2022年にスーパーシティ型国家戦略特別区域(戦略特区)に指定。戦略特区の行政施策の一環として「つくばスーパーサイエンスシティ構想」を策定し、規制改革とともに先端的な技術とサービスをつくば市発で社会実装することで、さまざまな幸せをもたらす大学・国研連携型スーパーシティの実現を目指していると説明する。
今回の実証実験は、子育て世代を対象に子どもMaaSとして、自動車での送迎なしに公園や科学を体験できる施設に行けるようになることを想定。子どもたちにとって乗車するのが楽しい乗り物になるとも説明する。児童クラブや習い事の行き帰りに子どもだけでも安全に移動できるようになることで、子育てに優しい都市の魅力度を高めたいとしている。
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JAXAプレスリリース