ニュース
「スターライナー」宇宙飛行士、「クルードラゴン」で宇宙服を着用できず
米Boeingの宇宙船「Starliner」に搭乗する宇宙飛行士が、緊急時にSpace Exploration Technologies(SpaceX)の宇宙船「Crew Dragon」で宇宙服を着用できない。海外メディアのSpace.comが報じている。
Starlinerは6月に初の有人飛行試験(Crew Flight Test:CFT)として2人の宇宙飛行士、Butch Wilmore氏とSuni Williams氏を国際宇宙ステーション(ISS)に送った。しかし、Starlinerのスラスターの故障から、2人は9月24日以降に打ち上げられる、SpaceXによるISS宇宙飛行士輸送ミッション「Crew-9」で2025年2月に帰還する予定だ。
Crew-9に活用されるCrew Dragonは本来4人乗り。今回は、Wilmore氏とWilliams氏が乗るために、Crew-9としてISSに向かう宇宙飛行士は2人となっている。
Starlinerは9月6日にISSを離脱し、無人で地球に帰還する。ISSで今後、万が一緊急事態が発生した場合、Starlinerの2人は「Crew-8」として打ち上げられ、現在ISSにドッキングしているCrew Dragonに避難することになる。しかし、米航空宇宙局(NASA)によれば、Starlinerの宇宙服はCrew Dragonに適合しない。
現在ISSには、Crew-8として輸送された4人の宇宙飛行士が滞在している。もし地球に帰還する必要があれば、Starlinerで輸送されたWilmore氏とWilliams氏はCrew Dragonの座席下の貨物パレットに乗り込むこととなる。Crew-9には、Wilmore氏とWilliams氏が着るための宇宙服が搭載される予定だ。
SpaceXとBoeingは、「商業乗員輸送プログラム(Commercial Crew Program:CCP)」としてISSに宇宙飛行士を送迎するミッションを委託されている。2社はそれぞれ、宇宙船だけでなく、独自の宇宙服を開発、活用している。
Crew Dragonは完全に与圧されていることから、Starlinerの2人が宇宙服を着ないままCrew Dragonに乗っても表面上の危険はない。しかし、減圧のわずかなリスクが致命的なリスクになり得る可能性は残る。
旧ソ連のSoyuz 11では、バルブが緩んでいたことから空気が漏れてしまったために搭乗した3人の宇宙飛行士が窒息死してしまったという事故が1971年に起きている。当時のSoyuzで使われていた帰還モジュールは宇宙服を着たまま乗り込む構造ではなかった。
こうしたことも踏まえて、1986年のスペースシャトル「Challenger」の事故以来、NASAは打ち上げと着陸に宇宙服を着用することを決めている。