解説
日本の宇宙スタートアップ、国内従業員数ランキング–10位から1位は?【2024年4月版】
2024.06.06 09:00
近年、世界中で多くのスタートアップが登場し、成長産業を創出するフロンティアとして盛り上がりを見せる宇宙産業。日本政府も2024年3月に発表した資料「国内外の宇宙産業の動向を踏まえた経済産業省の取組と今後について」において、2030年代早期に宇宙ビジネスの市場規模を8兆円に倍増するとの目標を打ち出している。
国内でも数々の宇宙産業スタートアップが注目を集めているが、実際に宇宙産業に携わる就労人口はどのくらいの規模となっているのか。スタートアップ企業への出資やオープンイノベーションなどに取り組む事業会社や投資家向けに、スタートアップデータベース「KEPPLE DB」を提供するケップルは、このたび「国内スタートアップ就労人口」の集計調査を行った。
今回は、KEPPLE DBにて表示機能を備える従業員数情報を基に、宇宙産業スタートアップの従業員数ランキングを紹介する。集計対象は、「東証グロースに上場した企業」の2社も含む。厚生労働省を基に週20時間以上働くなど、一定の労働実態がある雇用保険の被保険者を対象として、2024年4月時点の国内従業員数の集計を行った。
国内宇宙スタートアップの従業員数ランキング(上位10社)
従業員数の上位10社は下記の通りとなった。2023年にグロース市場へ上場したispaceやQPS研究所、2024年5月に上場承認されたアストロスケールホールディングスをはじめ、大型資金調達でも注目を集める企業が名を連ねる。
1位のアストロスケールホールディングスは、スペースデブリ(宇宙ゴミ)観測衛星を世界で初めて打ち上げた企業。スペースデブリ問題の解決を目指し、現在は衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去、既存デブリの除去、衛星の寿命延長、故障機や物体の観測・点検などのサービスの開発に取り組んでいる。2024年5月に上場承認され、6月5日にグロース市場に上場を果たした。
2位のSynspectiveは、マイクロ波で地表面を観測するSAR衛星「StriX」(ストリクス)を開発・運営する企業だ。SAR (Synthetic Aperture Radar)とは、日本語で「合成開口レーダー」と呼ばれ、電波の一種であるマイクロ波を使って地表面を観測する技術のこと。「StriX」は、日本政府が主導する革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」の成果を応用した小型SAR衛星となる。
3位は、超小型衛星関連事業を展開するアクセルスペースホールディングスがランクインした。同社は、 小型衛星のワンストップサービス「AxelLiner」、地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」を提供する。現在は、AxelLiner事業の一環として、小型衛星の机上検討から設計製造、打ち上げ、軌道上運用までをワンストップで提供する革新的なサービスの実現に向けた研究開発を進めており、2024年にはその実証衛星の打ち上げも予定している。
宇宙産業の成長で雇用増加へ
世界的な宇宙産業への期待の高まりから、国内においても新たな企業の設立が増加し、資金調達も活発化している。そして、開発競争が激化する中、各社開発部門を中心に採用活動が進んでいる。
今回の調査対象となった上位10社でも、2023年10月時点と2024年4月時点を比較して、全体で約15%の従業員数の増加が見られる。ランクインした企業で特に急拡大していたのが、10位の岩谷技研だ。高高度ガス気球による宇宙遊覧を目指す同社は、2023年12月に大型の資金調達を実施しており、この半年で従業員数が約67%も増加している。
今後も宇宙産業スタートアップへの投資がさらに加速されることが見込まれ、その動きとともに雇用の拡大が進むことは想像に難くない。1年後にはこのランキングもまた大きく変わる可能性があるため、引き続きこの動向には注目いただきたい。
なお、「ケップルスタートアップ就労人口調査」では、各ランキングの上位30社までのデータを無料でダウンロード可能となっている。
著者について
高 実那美
株式会社ケップル New Business Development Manager/アナリスト
新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わる。