小惑星探査機「サイキ」、長距離の光通信実験に成功--太陽・地球間よりも遠く

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小惑星探査機「サイキ」、長距離の光通信実験に成功–太陽・地球間よりも遠く

2024.05.01 08:00

塚本直樹

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 米航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「Psyche」(サイキ)が1億4000万マイル(2億2600万km)離れた地球に向けて、レーザーによる光通信のデモを実施した。

 Psyche2023年10月に打ち上げられ、火星と木星の間で太陽を周回している小惑星「16 Psyche」(プシケ)を調査する。探査機には、レーザー通信の実証実験を行う装置「Deep Space Optical Communications(DSOC)」が搭載されている。

米フロリダ州のケネディ宇宙センターのクリーンルームで撮影されたPsyche。金色の部分がDSOCの先端(出典:NASA / Ben Smegelsky)
米フロリダ州のケネディ宇宙センターのクリーンルームで撮影されたPsyche。金色の部分がDSOCの先端(出典:NASA / Ben Smegelsky)

 DSOCによるレーザー通信は従来の無線通信と比較し、10倍から100倍とはるかに高速な通信が可能となる。今回の2億2600万kmという距離は、地球と太陽の平均距離(約1億5000万km=1au)よりも長い。

 DSOCは2023年11月にも、1600万km離れた位置から地球にデータを送信した。Psycheのミッションを率いるMeera Srinivasan氏は「光通信と宇宙船の無線周波数通信システムとの連携が成功し、プロジェクトにとって重要なマイルストーンとなった」と語っている。

米国時間4月8日に25MbpsでデータをダウンリンクしたPsycheの位置の模式図。「Eyes on the Solar System」ではPsycheをインタラクティブに見ることができる(出典:NASA / JPL-Caltech)
米国時間4月8日に25MbpsでデータをダウンリンクしたPsycheの位置の模式図。「Eyes on the Solar System」ではPsycheをインタラクティブに見ることができる(出典:NASA / JPL-Caltech)

 Psycheの幅は279kmで、鉄やニッケルなどの金属を多く含んでいるとみられている。金属の豊富な小惑星に探査機が向かうのは世界初となる。古代の原始惑星の核とみられており、岩石惑星の核の形成について、貴重なデータを得られる可能性がある。地球の核の直接探査は現在の技術では不可能だが、Psycheの探査はその代替になると期待されている。

 太陽電池パネルから得た電力を用いて推進する「太陽電気推進」を採用する点も特徴だ。搭載するキセノンガスを電気でイオン化して推進器(スラスター)から噴射する方式で、得られる推力は弱いものの、少ないガス搭載量で長期間のミッションが可能となる。

 探査機は2026年5月に火星の重力を利用して軌道を変更した後に、2029年7月に小惑星へと接近する。約1カ月かけてシステムチェックし、同年8月から21カ月間、複数の軌道から小惑星の表面をマッピングし分析する計画だ。

関連情報
ジェット推進研究所(JPL)プレスリリース

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