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トヨタの月面探査車「ルナクルーザー」が月面へ–日米政府が署名、JAXA飛行士7名もコメント

2024.04.11 11:27

小口貴宏(編集部)

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 米国主導の有人月面探査計画「アルテミス」(Artemis)で、2人の日本人飛行士が月面に降り立つことが決まった。さらに、日本が月面を走る有人与圧ローバー(探査車)を開発および運用し、その費用を日本が負担することも決まった。

 この「与圧ローバによる月面探査の実施取決め」について、日本の文部科学大臣を務める盛山正仁氏と、米航空宇宙局(NASA)で長官を務めるビル・ネルソン氏は4月10日、共同で署名した。

日米両政府による署名の様子

有人与圧ローバー「LUNAR CRUISER」とは

 取り決めには有人与圧ローバーの詳細は明記されていないが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)がトヨタ自動車と共同開発している月面与圧探査車「LUNAR CRUISER」(ルナクルーザー)を指すと思われる。当初からアルテミス計画を見据えて開発されており、2018年に初期検討がスタート。2022年にはJAXAからの委託によって先行開発研究が始まった。

JAXAとトヨタ自動車が共同開発する有人与圧ローバー「LUNER CRUISER」

 LUNER CRUISERには「動くホテル」という側面もある。与圧された居住スペースは4畳半ほどで、ここに2人の飛行士が1カ月連続で滞在する。その間、飛行士は着陸船には戻らない想定だ。

 電源には再生型燃料電池(Regenerative Fuel Cell:RFC)を採用する方針だ。RCFは、発電した際に生じる「水」を電気分解することで、再度水素と酸素を取り出す技術だ。月は昼と夜が2週間づつ続くため、昼間のうちに発電で生じた水を電気分解し、夜に備えてエネルギーを蓄えられる。そして、月には氷として水が豊富に存在するとされており、燃料を現地調達できる利点もある。

JAXA宇宙飛行士ら7名がコメント

 日米両政府による「与圧ローバによる月面探査の実施取決め」への署名を受けて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士、および宇宙飛行士候補の7人がコメントを発表。それぞれ期待の思いを述べた。

 古川聡氏:「今回の与圧ローバ実施取り決め締結により、日本の得意分野での挑戦・貢献による国際協力で 有人月探査が今後進むことを、とても嬉しく思います。関係者のみなさまに感謝いたします。」

 星出彰彦氏:「月面有人探査の次の大きな一歩となる、「与圧ローバによる月面探査の実施取決め」が締結され ました。人類の活動領域を更に拡大し、月面での活動を持続的に維持するのに必要となる、極め て重要な機能を日本が担うことになります。誰もまだ経験したことのない新しいチャレンジになりま すが、これまで日本が蓄積してきた技術を結集し、JAXA 宇宙飛行士の一員としても、世界中の 関係者と力を合わせて貢献していきたいと思います」

  油井亀美也氏:「このたび、文部科学省とNASAとの間に、歴史的な合意が結ばれたことを本当に嬉しく思います。 月を目指して行う様々な活動には多くの困難が伴いますが、多くの方々と協力し一歩一歩努力を 重ねる事で、それらを乗り越え、人類の歴史に残るような素晴らしい成果を上げる事が出来ると 思います。私は、難しいミッションであればあるほど、心が躍ります!応援して下さる方々と共に、 次の世代に夢と誇りを繋いでいきたいと思います。」

 大西卓哉氏:「私はアポロ計画終了後に生まれ、リアルタイムで人類の月面着陸を体験していません。当時を知 る方々にお話を聞くと、何十年も前のことなのにそのときの状況を鮮明に覚えている方が多いこと にいつも驚かされます。50 年以上の月日が経ち、再び人類は月面を目指し、日本もお家芸ともい 2 える自動車産業をはじめとした産業界と官が一緒になってこのアルテミス計画に大きな貢献をしよ うとしていることを大変誇りに思います。私もアポロを知らない世代の一人として、月面で活動する 日本人宇宙飛行士に選ばれるよう、飛行士としてのスキルを磨いていきます! 」

 金井宣茂氏:「日本の有人宇宙開発の新たな 1 ページが開かれることを心から嬉しく思います。JAXA 内外を問 わずオールジャパンの力を結集して行う歴史的なプロジェクトであり、ワクワクが止まりません。わ たし自身も、わずかなりともその一助となれるよう、そして日本のみなさまに夢と希望のある話題を お届けできるよう頑張りたいと思います」

 米田あゆ氏:「月面での持続的な活動を実現する探査ローバ、月を周回するゲートウェイでの生命維持装置、お よび宇宙飛行士。日本の技術を結集し、米国を始め諸外国との国際協力の下、人類の新たなフ ロンティアへの挑戦がはじまっています。月面での人類の活動が飛躍的に広がり、科学をより発 展させるとともに、日本や世界中の子どもたちにも夢や勇気を与えることでしょう。この合意を大 変嬉しく思うと同時にご尽力くださった皆様に感謝申し上げます。未来へ胸躍らせつつ、貢献でき るよう一歩一歩前進し、訓練に励んでまいります」

  諏訪理氏:「かぐや、SLIM を皮切りに本格始動した日本の月・火星探査への道は、月極域探査ミッション (LUPEX)や火星衛星探査計画(MMX)を経て、有人与圧ローバへと続いていきます。人類が月・ 火星そしてその先を目指す中で、日本の貢献の形がはっきりと見えつつあることに気持ちが高ま ります。そして日本にとって宇宙開発が確実に新しいフェーズに入ってきていることを感じます。 我々は何を成し遂げ、そして次の世代に何をつないでいくのか。みなさんと一緒に考えながらそ の努力に微力ではありますが貢献できるよう頑張ろうという気持ちを新たにしました」

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