衛星などに影響--「太陽高エネルギー粒子」増加もたらす太陽フレアの条件が判明

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衛星などに影響–「太陽高エネルギー粒子」増加もたらす太陽フレアの条件が判明

2024.03.14 13:08

UchuBizスタッフ

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 名古屋大学の宇宙地球環境研究所(Institute for Space-Earth Environmental research:ISEE)と富士通は、宇宙の天気に影響を及ぼす「太陽高エネルギー粒子」(Solar Energetic Particles:SEP)の増加要因になる太陽フレアが発生する条件を突き止めた。東海国立大学機構と富士通が3月14日に発表した。

 東海国立大学機構と富士通は2023年2月に包括協定を締結。ISEEと富士通は、宇宙天気予報の高度化を目指して共同研究を進めている。宇宙天気は、宇宙での活動はもちろん、地上での生活に関係する通信障害や衛星測位の乱れ、航空路決定などにも影響することから、国内外で宇宙天気の観測や高度化に向けた研究が進められている。

 人工衛星や人体に直接影響するのがSEPだ。SEPは、太陽で発生する爆発的な増光現象である太陽フレアや太陽コロナのプラズマが突発的、大量に放出される現象であるコロナ質量放出(Coronal Mass Ejection:CME)で突発的に形成される。

 SEPは、宇宙放射線の一種であり、宇宙空間で直接被爆すると致死線量に達する場合もあるとされている。人類が宇宙に今以上に進出する未来では、SEPの発生と量を予測することが重要としている。

宇宙天気現象の発生とSEPによる影響のイメージ(出典:富士通、東海国立大学機構)
宇宙天気現象の発生とSEPによる影響のイメージ(出典:富士通、東海国立大学機構)

 SEPを増加させる太陽フレアの発生条件を導き出すために、富士通の人工知能(AI)技術「Wide Learning」で太陽フレアの明るさや発生位置、継続時間などの特徴である、以下のデータを活用して、SEP事象の発生につながる条件を分析し、抽出した。

  • 米海洋大気庁(NOAA)の宇宙天気予報センター(Space Weather Prediction Center:SWPC)が提供する、過去のSEPの増加事象と太陽フレアの明るさや継続時間、位置を記録したデータベース
  • 米航空宇宙局(NASA)の太陽観測衛星「Solar Dynamics Observatory(SDO)」が観測した、太陽の黒点周辺領域の表面磁場データ
  • ISEEが開発したスキームを使い、名古屋大学 情報基盤センターが2020年に導入した富士通製スーパーコンピューター「不老」で計算された黒点周辺の3次元磁場モデル

 分析の結果、SEPの発生で太陽フレアの規模と継続時間が重要であることに加え、太陽フレア発生数が少ない黒点領域で発生する第一太陽フレアがSEPの増加をもたらしやすいことを見出したという。

 太陽フレアはある黒点で連続して発生する傾向があるため、太陽フレア発生の予測には、直前に発生した太陽フレアの履歴が利用されていた。

 今回の研究成果は、SEP事象の予測では、前日の太陽フレアの活動が比較的弱かった黒点領域で発生する、第一太陽フレアの予測が重要であることを示唆しており、今後の宇宙天気予報の研究開発に新しい指針を与えるものと意義を説明している。

 今回の研究で構築した分析モデルでは、従来のSEPの増加予測手法と同等の精度で予測を実現でき、黒点周辺の3次元磁場モデルに基づいた独自のパラメーターを活用することで、さらに精度が向上することも確認したとしている。

今回の研究成果が宇宙天気予報に新たな指針をもたらすという(出典:富士通、東海国立大学機構)
今回の研究成果が宇宙天気予報に新たな指針をもたらすという(出典:富士通、東海国立大学機構)

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