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【速報】「H3ロケット」初の打ち上げ成功–試験機2号機が無事軌道に JAXA
2024.02.17 09:44
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業は2024年2月17日午前9時22分、国産基幹ロケット「H3」試験機2号機を種子島宇宙センターから打ち上げた。打ち上げは無事成功した。
打ち上げから2分後、補助ブースターの「SRB-3」を分離。その後、衛星フェアリングも無事分離した。そして、1段エンジンの燃焼終了、第1段と2段分離、さらに前回の打ち上げで失敗した第2段エンジンへの点火にも成功し、記事執筆時点でペイロードの1つ「CE-SAT-IE」の軌道投入も果たした。
H3ロケットとは–最大で価格半減をめざす
H3とは、H-IIAの後継として開発された大型基幹ロケットだ。毎年6機程度を安定して打ち上げることで、日本における宇宙輸送の基盤とするほか、民間商業衛星の打ち上げ受注を目指し、柔軟性・高信頼性・低価格の観点で「これまで以上に使いやすいロケット」として開発された。
具体的には、まず打ち上げ価格の低減を図った。固体ロケットブースタを装着しない軽量形態ではH-IIAの約半額を目指している。そのため、宇宙専用の部品ではなく、自動車産業などの民生品も活用。さらに生産方式も受注生産からライン生産に近づけている。
加えて、ロケットの組み立て工程や、衛星のロケット搭載といった射場整備期間もH-IIAから半分以下に短縮。予定した日時に打ち上げる「オンタイム打ち上げ率」もH-IIAの水準を維持することで、打ち上げサービス市場での高い競争力を狙っている。
政府は、H3ロケットと、今後立ち上がるスペースワンやインターステラテクノロジズなどの民間ロケットをあわせ、2030年代前半までに年間30回程度のロケット打ち上げ能力を国内で確保し、宇宙開発における日本の存在感を維持したい考えだ。
1号機の失敗を踏まえ「ダミー衛星」搭載
JAXAは1年前の2023年2月17日、H3ロケット試験機1号機の打ち上げに挑んだが、補助ロケットブースターが点火せず打ち上がらなかった。
その後、同年3月17日に挑んだ再度の打ち上げでは、1段エンジンが点火し打ち上がったものの、第2段エンジンが点火せず指令破壊となった。そして、搭載していた総開発費379億円の先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)も失われた。
そこで試験機2号機では、衛星喪失リスクを踏まえ、ALOS-3の質量特性を模したダミー衛星「VEP-4」を搭載。ほかに2機の小型衛星「CE-SAT-IE」「TIRSAT」を搭載して打ち上げられた。
「枯れた技術への過信」を見直し
1号機の打ち上げ失敗後に発足した原因究明チームは、失敗の原因を3つのシナリオに絞りこんだ。また、原因を1つに特定せず、あえて3つまで残し、3つのシナリオに対して畳み掛けた対策を実施することなどで、1年以内という比較的早期の打ち上げ再開を実現した。
なお、故障シナリオのうちの2つは、1994年に運用を開始した「H-II」ロケットから使い続けている機器に起因していた。「枯れた技術を使い続けることの難しさを感じた」とH3プロジェクトマネージャーを務める岡田匡史氏は2024年1月の会見で語っていた。
これを受けJAXAは、H-IIから使い続けている機器に対し、経年による製造しにくさなどに起因する不具合ポテンシャルが内在していないか確認。さらに、H-IIロケット以前に基本的な設計を確立し、運用し続けている電気系機器についても再評価し対策を施した。結果として初の打ち上げ成功につながった。