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Synspective、ベトナムの地盤変動をSAR衛星で観測–洪水リスクに対応
2024.02.08 13:52
小型の合成開口レーダー(SAR)衛星を開発、運用するとともに衛星データ解析によるソリューションを提供するSynspective(東京都江東区)は2月8日、ベトナムの天然資源環境省 リモートセンシング局や富士通ベトナムと衛星リモートセンシング技術の応用分野での協力を目的にした覚書(Memorandum of Understanding:MoU)を締結したことを発表した。
今回の覚書は、2024~2028年にベトナムでの天然資源や自然環境のモニタリング、自然災害防止でSynspectiveの小型SAR衛星コンステレーションが取得したSARデータや解析ソリューションと富士通ベトナムの統合ITソリューション、それぞれの応用と知識や経験を交換する。
具体的には、Synspectiveが提供する地盤変動モニタリング(Land Displacement Monitoring:LDM)システムで地盤変動を観測、解析する。SARデータを他地域に応用するとともに要求事項を開発、天然資源問題の原因と影響を調査、データを収集する。SAR衛星コンステレーションでのベトナム独自のモニタリング体制も検討する。
ベトナムは、地下水の汲み上げなどの原因から地盤沈下や地滑りに見舞われており、潜在的に洪水リスクを抱えているという。特に中部高原では、壁や地面に多くの亀裂が入り、広がっているように見え、他の多くの場所でも連続して発生していると説明。地面の亀裂は地滑りの最初の兆候の一つであり、長引く大雨で土壌が飽和状態になり、強度が低下することが原因である可能性が高いと指摘されている。
衛星データで定期的、広範囲で観測することで自然災害の兆候である地盤変動を捉えられれば、その後の対策を検討して実行できる。このような社会課題に対して、LDMの簡易性や効率性、有効性を検証する。
今回の覚書締結は、2023年9月にインドネシアのジャカルタで開催されたアジア太平洋地域宇宙機関会議(Asia-Pacific Regional Space Agency Forum:APRSAF)の宇宙産業政策会合を経て、東アジア・アセアン経済研究センター(Economic Research Institute for ASEAN and East Asia:ERIA)が支援して実現したという。
ERIAは、東南アジア諸国連合(ASEAN)や日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国の首脳が合意して設立された国際機関。東アジアでの経済統合について政策を研究、政策を提言する活動を続けている。
ERIAでは、宇宙技術を活用して日本とASEANの社会経済の発展を目指してASEAN地域での拠点整備やビジネス化までのスキーム作りについての政策を研究している。今回の覚書での施策は、ASEANでの日本の衛星データや衛星データプラットフォームを活用した新しいエコシステム構築を図るモデルケースの一つになると解説している。
ベトナムはアジア太平洋地域(APAC)でも最も災害の危険度の高い国の一つであり、台風や熱帯低気圧による強風や洪水、高潮、土砂災害が頻発して大きな被害をもたらしている。
ベトナムは、こうした自然災害の課題をリモートセンシングでの解決を目指して画像データ収集システムやデータベース、アプリケーション開発など国を挙げてリモートセンシング技術への投資に重点を置いており、国際協力活動の強化を推進しているという。2030年に向けて、これら宇宙科学技術の観点から国防や安全保障、天然資源、環境保全などに活用しつつ、社会経済の発展を目指している。
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Synspectiveプレスリリース