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火星の衛星「フォボス」に日本の探査機が降り立つ「MMX」計画とは–現況をJAXA説明

2023.12.09 08:30

小口貴宏(編集部)

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)で理事長を務める山川宏氏は12月8日の定例会見で、火星の衛星「フォボス」のサンプルリターンプロジェクト「MMX」(Martian Moons eXploration)の現況を明らかにした。

MMXとは

 MMXとは、JAXAがこれまで成功させてきた「はやぶさ」「はやぶさ2」に続くサンプルリターンミッションだ。半径11kmほどのフォボスに着陸し、採取した砂を地球に持ち帰ることで、太陽系の惑星、そして生命に不可欠な水と有機物の起源について、新たな知見を得ることを目的としている。

(出典:JAXA)
(出典:JAXA)
(出典:JAXA)

 現時点ではNASAの火星サンプルリターンミッションよりも早く、火星表面のサンプルを地球に持ち帰ることが期待されている。フォボス表面には、隕石衝突によって火星表面から吹き飛ばされた砂や塵がかなりの量降り積もっていると考えられているためだ。

 また、フォボスは将来の有人火星探査の重要拠点と目されている。その表面をリモートセンシングで詳細に観測することで、天然の宇宙ステーションとしての利用可能性も探る。具体的には、レーザーを照射してその反射から表面高度などを調べる「LiDAR」、表面地形を詳細に観測する40cm解像度の望遠カメラ、多波長カメラなど11の科学機器を搭載する。

 さらに、探査機は取得したサンプルを地球に持ち帰ることから、将来の有人火星探査に必要な、地球と火星圏の往復を実証することになる。

打ち上げはいつ?

 MMXは当初、2024年度に打ち上がり、2029年度に地球にサンプルを持ち帰る計画だった。しかし、2023年12月5日に開かれた内閣府の宇宙政策委員会で、MMXの打ち上げを2年延期する案が取りまとめられた。これが決定すれば打ち上げは2026年度となる見通しだ。

JAXAの山川理事長

 打ち上げの延期についてJAXAの山川氏は「H3ロケット試験機1号機の失敗を受け、全体的なスケジュールを調整するなかで、『MMXは事前検証をしっかり行って信頼性を高める』ということで、スケジュールが後ろ倒しになった」と説明した。

 また、2年間という延期の期間については「火星に向かうチャンスは2年に1回なので、次のチャンスを狙っている。関係者やサイエンスコミュニティーには、もちろん『早く打ち上げたい』という気持ちもあるが、2年延期しても(他国に先駆けて火星サンプルを採取するなどの)科学的な意義は失われないと考えて今回の調整結果になったと考えている」と述べた。

現況は

 JAXAの担当者はMMXの現況についても説明した。それによれば、現在は熱試験モデルや構造試験モデルを用いて、探査機の製造試験を行っているという。「探査機のバス(主要部)と各ミッション機器や、電気的・機械的なインターフェイスが仕様を満たしているか確認している」と説明する。

 また、打ち上げ延期の理由となった「信頼性を高めるための事前検証」の中身については「実際の運用に向けた準備や、必要な運用ケースを想定した試験について、追加や手順の検証、そして運用要員の訓練も必要になるのでそういったところをやる」と説明した。

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MMX(JAXA)

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