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太陽近傍で彗星の塵放出を撮影、壊れていく様子を初観測–マウナケア天文台群
2022.06.17 14:23
国際的な研究チームは、日本の「すばる望遠鏡」をはじめとする米ハワイのマウナケア天文台群の望遠鏡を使用し、太陽の極めて近くを通過する彗星が塵を放出するのを確認した(国立天文台)。こうした彗星の質量放出を明確に観測できたのは、これが初めてという。
水星の公転軌道より内側、つまり太陽のごく近傍を通過する彗星「near-Sun comet」は、観測が難しいこともあって詳しい調査が困難だ。この種の彗星は、理論的に予想されている数よりも少なく、何らかの作用で破壊されていると考えられていた。
そこで、マカオと米国、ドイツ、台湾、カナダの研究者らは、すばる望遠鏡のほか、「カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(Canada-France-Hawaii Telescope:CFHT)」や「ジェミニ北望遠鏡」などを使い、太陽に近づいた「323P/SOHO(323P)」を観測。そして、太陽接近前に点状だった彗星が、接近後に長い尾を引いていたと確認できた。
この現象は、太陽に接近した彗星へ太陽からの強い放射による圧力が加わり、彗星核の一部が崩壊して塵が放出されたためとみられる。研究チームは、「氷の塊に熱い飲み物をかけると割れるのと同じようなもの」と説明している。太陽に近づく周期彗星が少ない大きな要因の1つは、彗星が太陽近傍で壊れることだと観測で示されたとした。
今回の観測で323Pの軌道を正確に決定できた。その結果、この彗星は今後2000年以内に太陽へ突入し、消滅するとみられるという。