ニュース
JAXA、コンステレーションでの衛星観測の事業コンセプトを民間企業4社と共創
2023.03.09 13:30
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新事業促進部は3月8日、新たなJAXA・民間連携コンステレーションミッションの創出に向けて、「衛星コンステレーションによる革新的衛星観測ミッション共創プログラム」(コンステ共創P)を開始すると発表した。
2021年12月に改訂された宇宙基本計画工程表で「衛星コンステレーションによる革新的衛星観測ミッション共創プログラムにて、高分解能・広域観測に優れる政府の大型衛星と、観測頻度に優れる民間の小型衛星コンステレーションを組み合わせ、安保・防災などに資する、官民共同の観測衛星コンステレーションを構築するために必要な複数衛星の制御最適化などの研究開発に取り組む」とされている。
JAXA新事業促進部は、民間企業などによる新たな官民連携コンステレーションミッションの創出に向けて、コンステ共創Pの実施を決定した。
官民連携コンステレーションミッションの創出に必要な研究開発を実施するとともに、新規ビジネスの事業化検討を民間企業との共創活動で実施することになった。2022年7月12日から8月16日まで事業コンセプト共創活動を公募していた。
具体的には、衛星システムや地上システムなどの開発や運用のコストを自己負担することを前提に、陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)や先進レーダー衛星「だいち4号」(ALOS-4)と小型の合成開口レーダー(SAR)衛星を連携させた事業のアイデアを募集する。
ALOS-2やALOS-4と小型SAR衛星を連携させた事業アイデアを実現するために必要となる、取り組みたい技術の課題も対象。ALOS-2やALOS-4以降も継続してデータを取得することを想定した場合に事業をより良くするために必要となるJAXA衛星への要求や要望も対象にしている。
4件が提案され、事前対話を通じて実際の共創活動実施で合意に至った4社との間で覚書を締結している。
- QPS研究所=SAR衛星2機による協調観測、広域観測が可能なJAXA衛星と高分解能・高画質な自社衛星との連携観測による事業アイデアなどの検討
- Synspective=JAXA衛星と民間衛星などの複数衛星の相互運用・利用による衛星データ活用事業の検討
- スペースシフト=複数の高解像度衛星データの組み合わせによるSAR衛星での効率的な観測促進、高性能AI解析によるSAR衛星データを活用した事業の検討
- 三菱電機=広域・高精度の大型衛星と、時間分解能に優れる民間小型衛星の最適な連携を一元的に実施するプラットフォーム事業の検討
ALOS-4は、2014年5月に打ち上げられたALOS-2(現在も運用中)の後継機。新しく採用したビームフォーミング技術でALOS-2の3mという空間分解能を維持しながら、観測幅はALOS-2の4倍となる200kmに拡大させている。
この空間分解能や観測幅によって、発災後の状況把握に加えて、火山活動や地盤沈下、地滑りなどの異変の早期発見など減災への取り組みで重要な役割を担うと期待されている。SAR衛星と協調観測することで海洋監視に有効な船舶自動識別装置の受信機も搭載している。