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タイガー魔法瓶などの真空二重断熱容器、ISSを往復–往路と復路で温度を維持
2022.02.16 07:30
タイガー魔法瓶などが共同で開発した、宇宙実験の試料(サンプル)を保冷状態で格納する「真空二重構造断熱・保温輸送容器」が国際宇宙ステーション(ISS)を往復した。2月15日に発表された。
実験試料は同容器に収納され、2021年12月21日にSpaceXが製造した「Cargo Dragon」で打ち上げ(ミッション名は「SpaceX CRS-24」)。約1カ月の宇宙実験を経て、タンパク質結晶を格納した同容器は2022年1月25日にCargo Dragonで米フロリダ州半島沖に着水、帰還した。同容器を利用したことで往路と復路の両方で温度は規定範囲で維持されていたという。
タイガー魔法瓶が開発にかかわった真空二重断熱容器が宇宙で初めて使用されたのは2018年11月。複数回利用などの要求事項をクリアした現在の容器を新たに開発し、2021年7月に使用、帰還。同社がかかわった容器が宇宙でのミッションに使用されるのは、今回で通算3度目。
容器は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が繰り返し実施している宇宙実験用として継続的に使用したいという要望から、1回限りの使い切りではなく複数回利用に耐えうる設計を要求した。
複数回利用を可能にするために、真空保持設計や真空度を維持するための部品について、民生設計より高いレベルで設計したと説明。今回で2回目の使用となった容器は今後も宇宙実験用として繰り返し使われる予定としている。
タイガー魔法瓶は2018年11月、日本初の挑戦となった、ISSから実験試料を地球へと回収する技術実証でISS補給機「こうのとり」7号機が運ぶ小型回収カプセル内に搭載された真空二重断熱容器をJAXAと開発した。真空二重断熱容器は保冷剤を使って「4℃±2℃の範囲で4日間以上の断熱性能、かつカプセル内に入った状態で最大40Gという着水時の衝撃に耐える強度」という条件をクリアし、無事に試料をダメージなく地球に持ち帰ることができたと説明する。
その後、第2フェーズとして、新たな保冷性能条件や容器再利用という要求事項を満たした真空二重断熱容器の開発をJAXAから依頼された。ISSとの往復時に、恒温での輸送が必要なタンパク質サンプルを12日間以上20℃±2℃に保つという条件を求められた。JAXAやテクノソルバ(神奈川県藤沢市)とともに長時間保温できる構造の議論を重ね、複数回にわたる温度実験を経て完成したという。
第2フェーズの要求事項は「打ち上げからISSまでの実験試料の温度を維持するため、保冷剤を同梱することで20℃±2℃を12日間以上保つ」「ISSから地上に回収するまでの期間も20℃±2℃で7.5日以上保つ」「真空断熱技術による高性能な保冷機能を保ちながら、容器の質量を保冷剤を含んだ状態で4.7kg以下に、容器サイズをコンパクトにする」「長期的な利用を想定し、1回限りの使い切りではなく、3年以上または6回以上の再利用を可能にする」といったものだった。