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驚異的な偏光度のX線観測で見えたもの 米伊主導の研究、山形大参加

2023.01.23 15:30

朝日新聞

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 高エネルギーの電磁波「X線」の偏光を高感度で撮影できる衛星が打ち上げられ、研究者が驚く結果をもたらした。米国とイタリアが主導し、日本も参加する研究グループには山形大も名を連ね、観測データの解析を担った。何が見えたのか。

 X線偏光観測衛星「IXPE」が2021年12月、米フロリダ州から打ち上げられた。米航空宇宙局(NASA)とイタリアの研究機関が中心となる観測で、日本からは理化学研究所のほか、山形、広島、大阪、千葉、名古屋、東京理科の各大学が参加している。

 「ベラパルサー星雲のX線の偏光を世界で初めて観測できた。X線は予想以上に強く偏光しており、美しく整列した磁場が存在することを意味している」

 1月12日に山形大で観測結果を発表した同大学術研究院の郡司修一教授(宇宙物理学)は説明した。

 どういう意味か。

 重い星は一生の最後に大爆発を起こし、中性子星(パルサー)ができることがある。回転する中性子星が吹き飛ばした電気を帯びた粒子が、爆発で吹き飛んだ物質とぶつかりX線が出る。中性子星の周りではパルサー星雲と呼ばれる天体がしばしば観測される。

 ベラパルサー星雲はその一つで、約1万1千年前に爆発した天体の残骸。地球から光速で約1千年の距離にある。

 偏光は電磁波のもつ性質で、磁場の形状などを反映して波が偏る。観測結果によると、ベラパルサー星雲のX線の偏光度は平均45%で、局所的には60%だった。これらの数値が研究者を驚かせた。

 偏光度は光の波が同じ方向を向いている割合を示す際などに使われ、100の光の波がすべて同じ方向を向いていれば偏光度100%になる。

 何と比較したのか。1970年代、天体から来るX線の偏光観測が行われた。当時は機器の性能がまだ低く、パルサー星雲の一つ「カニ星雲」だけを観測できた。そのときの偏光度は約20%だった。

 データを解析した山形大理学部プロジェクト研究員の渡邉瑛里さんは「磁場は目に見えないが、偏光を観測することで可視化できる。今回得られた偏光度は驚異的に高い」と話す。

 X線は荷電粒子が磁場に絡みつき、放射される。偏光度が高いほどベラパルサー星雲の磁場の向きはそろっていることになる。

 今回は予想外の観測結果になったため、山形大など複数のグループがそれぞれデータを解析し、誤りがないかを確かめた。観測結果は22年12月、英科学誌ネイチャーに掲載された。

 カニ星雲とベラパルサー星雲にどのような違いがあるのかや、磁場の構造など解明されていない点は多いといい、IXPE衛星は新たなパルサー星雲も調べている。(坂田達郎)

ベラパルサー星雲のX線の観測結果について説明する(左から)山形大理学部プロジェクト研究員の渡邉瑛里さん、同大学術研究院の郡司修一教授=2023年1月12日、山形市小白川町、坂田達郎撮影
ベラパルサー星雲のX線の観測結果について説明する(左から)山形大理学部プロジェクト研究員の渡邉瑛里さん、同大学術研究院の郡司修一教授=2023年1月12日、山形市小白川町、坂田達郎撮影

(この記事は朝日新聞デジタルに2023年1月21日10時45分に掲載された記事の転載です)

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